第37章 有紀との会話は中途半端に終わったのだが、特に結論が出るような話でもなかったので、家に戻ると、何事もなかったように、お互いの部屋に入って行った。
結局、美絵さんの、圭と私の関係への疑惑は、彼女の妄想だった、ということで結論が出たのかどうかも怪しかった。
有紀の情報も曖昧だったし、美絵さんの疑惑の根拠も曖昧だった。美絵さんに直接、なにを心配しているの、と直接聞き質したい気分になるわけだけど、ウッカリ、藪蛇になるようなことをするのも馬鹿げていた。
こういう状況で、圭との関係を継続していて良いのだろうか。とても良いとは言えない。たぶん、セックスにも直接影響するだろう。そんな宙ぶらりんなつき合いが続けば、二人の関係がギクシャクしたものになるかもしれなかった。
圭と私の行為を、美絵さんが眺めているような想像図が浮かんで消えた。とても無理、この疑惑騒動を何とかするまで、圭と会うのは封印すべき、そんな結論を私は得た。そんな感じで、眠りに就きかけたとき、圭からメールが入った。
『最近、あちらの方の誘いがないけど、近々会いませんか?それとも、何かアクシデントでも起きているのか、チョッと心配もしています』
当事者の一人である圭の能天気なメールに、私は一瞬ムカッとした。そして、“馬鹿野郎!”とまで書き込んだ画面をクリアした。
圭に怒りぶつけて済む問題でもない。ただ、しっかり、私の耳に入ってきた雑音、意味深な手紙について、冷静に整理整頓しなければならない時だと思った。
自分のやっている行為に、何のやましさもないのなら、捨て置いておいても良さそうな事柄だった。しかし、疚しい(やましい)行為であると同時に、生活の充足感の一部になりつつある、弟、圭との性的関係を易々と捨て去る気もなかった。
『二人の関係に関わる色んな問題に対応しているのよ。正直、その辺の目安がつかないと、気持ちが乗らないの。そういう時は、無理しないのが一番でしょう。アナタも、少しはリスクのこと考えてみたら?』、私は、そんな趣旨のメールを送った。
その後、圭と私の間では、何度もメールのやり取りがあったが、特に目新しい情報が含まれてはいなかった。美絵さんの、圭に対する態度に、変化の兆しはまったくないと、圭は主張した。
そして、美絵が、自分たち夫婦の悩みと云うか、恥のようなものを、有紀に話すことさえ作り話だとまで、圭は主張した。
私は、いい加減でメールを切り上げた。すべてが疑わしく、悩みだしたら切がなさそうだし、具体的にアクシデントが起きているわけでもない。
具体的な脅威と言えば、意味不明な1通の封書だけなのだから、その手紙の文面通り受けとめてしまう手もあった。単に差出人が慌て者で、自分の住所や名前を書き忘れた可能性だってあると思った。
つづく
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