第74章「君は、明日警察に行かなければならないし、僕は、家に帰って仕事を片づけなければならない。部屋を借りる件の電話もしなければならないんだよ」
「わかっているわ。でも、貴方の話がしたいの」
「俺の話っていってもね、特別、なんてことないからさ、話が長続きしないし、広がらないよ」
「いいのよ、私が拡げるから。で、貴方の収入って、幾らくらいなの?」
敦美が何を考えているのかハッキリしなかったが、俺を召使にしようと企んでいるような予感はあった。望んで、召使になる気はなかったが、相手が望むのであれば、条件次第では、召使になるのも悪くないと感じていた。
「そうだね。月にして、平均だけど70万くらいかな」
「お家の方に幾ら渡しているのかしら?」
「40くらいだね」
「30が、貴方のおこづかい?」
「小遣いは20くらいだよね。後は、いざと云う時の貯金かな?」
「あのさ、私の財産って、金融資産が十五憶くらいあるわけね、だから、その運営会社を作りたいと思っているの。その手伝いをして貰えないかしら?」
「俺がか?」
「ええ、貴方が」
「そう云う話なら、信託系の銀行とか、会計士や弁護士と相談するのが筋じゃないのかな?」
「最終的に、そういう人たちに頼むとしてもよ、その前段で、こちら側の意志が必要なわけでしょう。その仕事をして欲しいの。時には、出資や事業展開の話があっても構わないし……」
「なんだか、今のままの状況でも、無理すれば出来そうな話じゃないのかな。君が必要とするとき、相談になれば良いわけだろう」
「違うの。相談するためには、相談の内容を考えなければならないわけよね。それが、面倒というか、それが出来ないの。だから、貴方に、相談内容も、その答えも任せたい、そういうことなんだけど」
「そう、構わないけど、意思決定は君がしないと、どうにもならないんだけど」
「意思決定って?」
「沢山儲けたいか、儲けは少しで安定的にとか、そういう面を決めて貰わないと」
「ああ、そういうことね。半分安全に、半分冒険的に、そんな感じ、そういうことで良いんでしょう?」
「まあね。それだったら、今のままでも引き受けられるよ」
「それじゃ意味ないわよ。私の為に働いてくれている感じがしないもの」
「どういうこと?その運営の為に、事務所でも借りるつもり?」
「そこまでは考えていないけど、貴方が仕事の為に、私のところに顔を出してくれる。そういう感じで良いんだけど……」
「君の中井のマンションに顔を出す、そういうことかな?」
「そうなるわね、毎日じゃなくて構わないけどね」
「そう、でもなあ……、その程度でお金貰うのもね……」
俺は、敦美の依頼を無料で引き受けるつもりはなかった。ただ、依頼の内容は簡単なことで、報酬を貰うのも気が引けた。しかし、週に数回顔を出す義務を、無料で引き受けるのも苦痛だった。
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