第69章敦美の中で果てたあと、俺は前後不覚に眠り込んでいた。敦美の身体から、勃起を抜いたのかどうかも判らずに、深い眠りに落ちていた。
携帯の音と、俺を揺さぶる敦美の腕の中で、俺は目覚めた。
携帯のデジタル時計が、午前1時を示していた。そして、電話の主が、寿美だと確認した。
出るべきかどうか、一瞬迷ったが、出ない方が不自然だと思い、素知らぬ顔で、眠そうな声で、身構えた。
“寝てたかしら?”
「あぁ、ウトウトしてたよ」
“さっきので、お疲れになったの?”
「まさか、あのくらいで、くたばるわけないよ。まぁそうは言っても、歳は歳だからね、もう無理は利かないよ。それで、何か急用でも?」
“そうね、急用と言えば急用ね。さっきの殺された男の話だけど、どうも、我が家に関係ありそうなのよ”
「殺されたって、あの片山とか言う男の話のこと?」
“そう、片山亮介の話よ”
敦美の身体が僅かに反応したが、大きな動きではなかった。
「でも、俺に関係ある話じゃないよね」
“貴方には関係ないわよ。でも、私には関係あるの。だから、聞いてほしいの”
「わかった。チョッと待って貰えるか。珈琲が飲みたいので、俺から掛けなおすよ」
“あまり待たせないでよ”
「あぁ、十分以内には電話するから。じゃあ、また後で」
俺は、携帯を閉じて、敦美の様子をたしかめた。
先ほどルームサービスで頼んでおいたコーヒーポットから、残りのコーヒーを注いだ。味は当然最悪だったが、気付け薬としては充分だった。
「ねえ、誰なの?」敦美が寝ぼけながら尋ねてきた。
「うん、知りあいなんだけど、旦那さんが殺された事情を知っている可能性がある情報なんだよ。或る新聞社の女社会部記者なんだけどさ、昔の俺の恋人でもある人なんだよ」
「もうそんな風に調べ出してくれてたの?」
「いや、偶然の一致に過ぎないけど、彼女、新宿界隈の麻薬情報を追いかけていたらしいのでね」
「そうなんだ。じゃあ、黙って聞いているわ。後で、話の内容なんか聞かせてね。私、お風呂に入ってくるけど構わないかしら?」
「あぁ、あとで、チャンとまとめて話すよ」
敦美が気を利かせたのか、本当に風呂に入りたかったのか、考える余裕はなかった。
いずれにしても、敦美が横で聞いていないことは救いだった。気が利くと云うよりも、敦美は勘が良いと言うべきなのだろう。
俺は、敦美がバスルームの扉を閉めるのを確認して、寿美の携帯を鳴らした。
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