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第156章
朝、大谷からの電話でたたき起こされた。朝といっても、現実は昼を回っていた。
“上野を殺した男が逮捕されました”
「ほう、嫌に早い逮捕劇ですね」
“逮捕と言えば聞こえは良いけど、自首したようです”
「なんだ、そういうことですか。とすると、嘱託殺人ですね」
“そう、チンケナ殺し屋ですね”
「そうか。それじゃあ、事件は闇の中そのものだ」
“そういうことです。まぁこれで、上野の死は、相当に権力中枢を脅かす問題だった、そういうことのようです”
「大谷さんも、ここは剣が峰ですね。僕は部外者ですが、魅力的事件過ぎて、何か面倒な気もしますけど……」
“そうなんですね、それだけに見逃すことによる弊害も大きいわけで、厄介です”
「どこか、アングラな雑誌に書かせる手もありますけどね」
“その手があったか……”
「そう、恩を売っておいて損のないアングラ雑誌社に、ですね」
“Kとか、Nですかね”
「そうですね、それにネット媒体と云う手のありますよ。場合によっては、SNSに情報を垂れ流す手もあるでしょう」
“SNSですか……”
「そう、SNS数社で情報ネタ元になっている連中を使う手もありますね。フェイクニュースでも、流れ出せば相当の影響ですから、もし、真実の一端が覗けるのであれば、それも手です。意外な情報が紛れ込んでくる可能性もあるでしょう」
“そうか、J党のSNS動員者は50人くらいいるようですからね。彼らの坩堝に情報を放り込むのは良いアイディアですね。ネタ元が判らないわけですから……”
「ただし、貸は作れませんけど」
“いや、この際は、貸よりも、身の安全と云うことも重要です”
「そうなりますか。まぁSNSで反応が悪かったら、アングラ方面は、それからでも遅くはないでしょう」
大谷との電話が終わった。
やはり、上野はディープな殺し屋に消されたようだ。しかし、どの辺に探りを入れたことで身の危険が生じたのか、その辺には興味が湧いた。
大谷に尋ねてみたいところだったが、大谷が事件に巻き込まれた時のリスクを考えると、直に疑問をぶっけることは控えた方がよさそうだった。
おそらく、◎のついた連中に直接ぶつかったか、その係累にぶつかり、情報の連鎖から、権力側の知るところになった可能性が高いのだ。
誰か情報屋を選んで動かしてみる手もあった。小分けにして、人物を選定してやれば、その情報屋にも、上野と同じ運命が舞い込むということになる。
しかし、そのような行為は、場合によると、未必の故意に該当するだろうから、犯罪なんだよな、俺は呆然と思っていた。
つづく