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終着駅32 私たちが食べていいものかどうか


 第32章

 「だいぶ昔のことだから、殆ど忘れてしまったけど、昔の農業って集約型だったから、男手は幾らあっても問題なし、誰の種かより、嫁が孕むことが好ましかったわけよ。女の子は子供を産む機械だったし、転売で一家の飢えを凌ぐことも出来た」私は適当に辻褄を合わせて話した。

 「なるほど!良い話を聞いたわ。次作のシナリオのテーマで迷っていたのだけど、“産めよ、増やせよ”で行くわ」

 「なに考えているんだか、アンタは」

 「あぁそうだ、そう云えば、美絵さんの話だったよね」

 「イイわよ、聞かなくても。どうせ、彼女の想像の産物でしょう」

 「そうそう、そのものズバリね。でも、私もなんとなく姉さんと圭の間を何度となく疑ったから、もしかすると、もしかするかもね、と美絵さんのこと脅かしておいたんだけど、マズかったかな」

 「なんてことするのよ。火に油注ぐようなことして、圭たちの家庭が壊れたらどうするのよ」私は、冗談ぽく軽く受け流した。

 「でもね、美絵さんって、箱入り娘でしょう。何となく、腹立たしくて、弄りたくなるキャラなのよ」

 「そうね、何も知らないような感じなのは確かだけど、アナタに弄られたら、私だって半分参るわよ」

 「いや、姉さんは、そう云うことないと思うな。何事にもへこたれない人だもの。私や美絵さんレベルが束になっても敵わないわよ。でもさ、圭って良い男だよね。私も半分くらい、圭となら、弟だけど一回くらい良いかなって思うんだけど、ねぇ姉さん、どう思う」

 「ウ~ン・・・・・・」私は唸った。即座に全否定するべき話なのだが、そのようにすることに、多少の躊躇いがあった。

 「そうだね、考えたことないけど、悪くはないかな?」このような答え方が、正しい選択かどうかは曖昧だった。

 「だよね、美絵さんに独占させるにはいい男すぎだよ。」

 「だからってさ、私たちが食べていいものかどうかは、別じゃないの」私は極力言い逃れられる道を手探りで探しながら、蓮っ葉な言葉をつないだ。

 「私さ、私一人で、圭のこと口説く勇気ないんだよね」

 「誰だって、そんな勇気あるわけないわよ」

 「違うのよ、私が誘っても、圭は”バッカジャねえの”って、笑らうだけだと思うの。でも、姉さんも一緒だけど、って言えば、圭は乗ってくると思うのよ」

 話は、想像もしていない方向に暴走し始めた。

 有希には、そういう傾向はあったが、圭との関係にまで、その傾向が表れるとは思いもしなかった。軌道を修正しないと、話はめちゃくちゃになりそうだった。
 つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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