2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

終着駅78 美絵の父親は女遊びが激しく…


第78章

「飲まずに語るのはちょっと無理ね。私ってさ、アルコールが入った方が、頭は冴えるみたい」

「で、早く有紀の推理ってのを聞かせてよ」

「これはあくまで、私の連想による作り話だから、外れている可能性は高いからね」有紀は、その言葉を数回続けて繰り返した上で話し始めた。

「私さ、圭たちの結婚式に出ていた時、美絵さんのお母さんの態度が、凄く気になっていたのよ。特別、変な行動を取ったとか、そういう意味じゃなく、喜色満面だった出席者の中で、お母さんだけは、どこか浮いていた。目立ったわけじゃなく、逆に目立たな過ぎて変だったのよ」

「そうね、私は、美絵さんのお母さんって、チョッと暗い人なんだな、と思っただけだけど…」

「そうとも取れるけど、こういう事態を迎えると、彼女の態度と、美絵さんの自殺の間に、何かあるんじゃないかと邪推してみたの」

「邪推なわけね」

「まあ邪推だよね。雰囲気が暗いだけで、何か、いちもつあるように思われるのは心外でしょうけど、可能性を探る意味では、美絵さんの関係者としては、一番臭いよね」

「で、美絵さんとお母さんが、どんな問題を抱えていたと想像してみたの?」

「あのさ、美絵さんのお父さんって、結構いい男だよね」

「そうね、大学教授みたいな雰囲気があるわ。実際は、かなり気さくな人だけど」

「そこよ、その意外性を持つ男って、だいたいに女にもてるものよ」

「たしかに、それはそうね」

「つまり、お父さんは女遊びが激しかった。なにせ事業家としてもかなりのものなのだから、どの程度か具体的なことは不明だけど、お父さんの、その性癖に、お母さんは長年苦しんできた、と想定したの」

「ふん、ありそうな話だね。でもだからと云って、美絵さんの自殺とどう繋がるのよ」

「ここからは、まったくの連想ゲームね。お父さんが、女にもてる素材を多く抱えていて、お母さんは、その女遊びに長年苦しめられていた。ここまでは、我々の観察とか、世間の常識から想像できる範囲でしょう」

「そうね、噂話の根拠にはなるね」

「その根拠を唯一の拠り所にするのだけど、美絵さんが、圭の行動に疑惑を持った場合、普通は友達とかに相談したりするだろうけど、美絵さんは世間体を気にして、友達には相談せず、母親に相談した」有紀が、私に、その考えに異論はあるかと云う視線を送ってきた。

「相談相手が、母親と云うのは、大いにあるね」私は有紀の連想に同意した。
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1010741jj.jpg


終着駅77 圭への面当てで浮気を…


第77章

「母親が、わだかまった感じがしたと、姉さん言ったよね」

「そういう感じだったけど、特に訳があったわけでもないけど」

「こういう問題は、その時の感じが大切なのよ。だから、姉さんの勘を前提に、考えておくことが必要だと思うの。仮によ、単純に圭の行動とかへの不安を美絵さんが持っていたという話なら、その心配ごとは普通なら義父さんにも伝わっていても良いわけでしょう」

「たぶん、普通なら、そうなるかな」

「ところが、父親は、その情報をまったく共有していないわけよね。てことは、美絵さんの疑惑は根も葉もないレベルだったわけでしょう。もしかすると、もっとよく確認するとか、話し合ってみるとかのアドバイスをするのが普通だよね」

「仮に、美絵さんが疑惑を持ったとしての前提があるのだけど」

「良いのよ、すべては推測なんだから、前提なしで、話は進まないから、前提はすごく大切なの」

「それで、仮にそうのようにして、美絵さんがお母さんに相談したとして、どうなるの」

「ここからは、私の作り話よ。」有紀は私の承諾を待つように一拍おいた。

「わかった。ここから先はシナリオライターの話として聞くから」

「その相談を受けた母親が、常軌を逸したアドバイスをしたら、どうなるかしら?」

「常軌を逸したアドバイス?貴女も仕返しに浮気しちゃいなさいとか?」

「そう、ズバリそうだった場合を想定してみると、美絵さんが死ぬほど辛い事態に嵌る可能性はあると思うの」

「美絵さんが、仮によ、圭への面当てで浮気をしたからと云って、そのことで、良心の呵責に耐えかねてなんて言わないでよ。昭和初期じゃないんだから」私は、有紀の推理が、ズバリ的中しないことを祈りながら、明るく振る舞った。

「勿論、面当てで浮気したとすれば、溜飲を下げるでしょうね。或いは、浮気した相手が、思ったほど満足できる男でなければ、少なくとも、その男を相手にする浮気はやめようとするわよね」

「でしょうね、折角リスクを冒してする以上、いろんな面で、圭より優れた男じゃないと、逆に哀しさが増すばかりだろうからね…」

「そこよ、問題は、そこなのよ」有紀は、推理の佳境に来ていることを示すように、珈琲を一気に飲み干した。そして、勝手に、冷蔵庫を開けると、ワインのボトルを手に戻ってきた。
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1000854jj.jpg


終着駅76 母親の態度に奇妙な感じが…


第76章

「男か…。考えにくいけど、美絵さんが浮気したってのは」

「第三者的にみるとそうだけど、実際問題、我々と圭との間には、ああいう関係があったわけだから、それが美絵さんの浮気関連と因果関係はあるのかもしれないからね」

「美絵さんが、我々三人の関係を知っていたってこと?」

「まさか、そこまでは知らないと思うわ。知っていたら、圭も我々もただじゃ済んでいない筈でしょう」有紀は、他人事のように笑いながら語っていた。

「なに可笑しいのよ」私は咎めるように語ったが、たしかに、美絵さんに追及されている、三人の姿を想像すると、どこか滑稽な感じはした。

「だってさ、他人を糾弾することが最も似合わない感じの美絵さんからは、想像出来ない図柄だから、悲劇なのに滑稽なわけでしょう、変よ」

有紀は断定的に決めつけたが、圭には、何らかのアクションを起こしていたのかもしれない。圭が、あの場では口に出来ない問題にきづいていた可能性は捨てきれなかった。

絶対的な確証でもない限り、実姉との不倫を追求すことは、憚られるだろう。ましてや、二人の姉と関係があるなど、めったに口には出せないはずだった。

ただ、圭の行動に不信を抱いた可能性は充分にある。彼女の推量を越える形で、圭の行動パターンが目につけば、理屈抜きに疑惑は持つだろう。その疑惑を直に圭にぶつければ痴話げんかで済みのだけれど、美絵さんが、それを抱え込んだ時は、話は違う方向に向かう。

抱えたままなら、鬱積を溜め込んで鬱になることもある。仮に、抱え込まずに、圭にも疑惑をぶつけない場合、誰に、その疑惑をぶつけるとか、相談するだろうか。

「美絵さんが、圭の行動に疑惑を持った場合よ、彼女は誰に相談するかしら?」黙り込んでいた有紀も、私と同じようなことを考えていたようだ。

「私も、今そのことを考えてたの」

「彼女は、そういう疑惑のようなものを、友達とかには話さない気がするのよ。話すというか、相談するとしたら、先ず母親よね」有紀がズバリ、相談相手は母親だと指摘した。

「私たちみたいに、姉妹がいたら、先ずはそっちだろうけど、彼女一人っ子だしね、母親だろうね」私は、有希の話に即発されて、確信的に、美絵さんの母親が何か知っている疑惑を強くした。

「あのさ、実は、圭の家で四人が通夜のような雰囲気でいたとき、私、美絵さんの母親の態度に、奇妙な感じは持ったのよ」そして、有紀にその辺の雰囲気を話した。

また、二人は沈黙の中に沈み込んだ。私は、半分思考を停止していた。こういう推理は、有希の作業であるかのように、その推理を待つことにした。私は、圭の家で味わっていた目一杯の緊張をクールダウンさせたい気分になっていた。

先ずはバスタブに身を沈めて、凝りをほぐそうと立ち上がった。その時、有紀が話し始めた。

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1000640ajj.jpg


終着駅75 彼女さ、誰かに脅迫されていたんじゃないの


第75章

流石の有紀も沈鬱な表情を浮かべて、ラブチエアーに座っていた。今夜はワインを飲む気分じゃないねと言って、濃い目に淹れた珈琲を飲んでいた。

「姉さん聞いてなかったのか。さっき、圭と電話で話したけど、服毒自殺だったらしいわ」

「そう。圭は大丈夫だった?」

「そうね、泣きじゃくってはいなかったけど、元気はなかったね。当たり前かもしれないけど…」

「睡眠薬飲んで、その上で青酸カリの服毒、念入りに自殺しようとしたのね」

「あまり詳しくは聞かなかったけど、そうしたらしいよ。たしかに、絶対に失敗したくないって気持ちが現れているよね。美絵さんからは、そんな凄味のある殺気なんて感じなかったけど、分らないものよね」

「そう、まったく感じなかったわ。気弱なくらいに感じる女性だったのに、余程のことがあったのかもね」

「私たちと圭との関係を知ったのかしら?」

「どうなんだろう。仮に、私たちが絡む問題であれば、何らかのアクションとか、フェイントくらい飛んできても良いはずだけど、特別思い当たることもなかったし…」

「そうよね、何年か前に、姉さんに奇妙な手紙が舞い込んだ事と、今回の美絵さんの件と結びつけるのも変だしね」

「まったく関係ないかどうか別にしても、直に美絵さんの自殺と関連づけるのも飛躍だよね」

「彼女さ、誰かに脅迫されていたんじゃないのかな?」

「強迫?」

「そう、彼女自身の過ちで、脅迫されていた」

「美絵さん自身の過ちって、彼女が浮気をしていたとか?」

「そう。美絵さんが、何らかの事情で、浮気に走った。その結果、のっぴきならない事情、いや事件のようなものが起きて、切羽詰まった…」

有紀は遠くを見つめる目で呟くように語った。シナリオライターである有紀の想像が、目まぐるしく様々なシチュエーションを展開させているだろうことは、容易に推測できた。

「美絵さんのような恵まれた主婦が悩むようになるのは、自分の病気とか、子供の育児とか、旦那さんの浮気や暴力だよね」

「そのどれもが当て嵌まらないわけだから、その事情は、推理しかないわよね。彼女が、ふらりと誘われて薬に手を出してしまったとか…。でも、そんなことなら、現場の確認作業の中でも、ある程度判ることじゃないの?」

「覚せい剤とかに手を出していたってこと?」

「そう。でもその線は消えているのだと思う。そうなると、やはり残るのは男よね…」
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1010143jj.jpg


終着駅74 単なる自殺として片づけられなかった


第74章

美絵さんは、我々のまったく知らない、何らかの秘密を抱えていたのかもしれない。圭も、彼女の父親も知らないのっぴきならない秘密があったのかもしれない。

美絵の母親は、何らかの心当たりがあるようにも感じられたが、私の感覚であって、特に具体的な証拠などはなかった。

ここまで事態が進展した以上、圭と腹を割って、我々が知っていることを、丸ごと俎上に乗せて考えてみなければならないと思った。

有紀から、メールで返信があった。『夜中なら行けます』という内容だったので、『寝ているかもしれないから、電話して』と返信しておいた。

有紀にとっても衝撃的な美絵さんの死だったが、詳細を語れるような状況ではなかったようで、無理やり時間の都合をつけた感じだった。

今回の問題で、有紀に力を借りなければならない事態は少ないと思った。有紀と圭の関係は、私と圭との関係の副産物のようなもので、従属的だった。近親相姦に便乗して、自分も経験しておこう。そういう感覚だったに違いないから、私よりも当事者レベルは低かった。

どちらかといえば、家族の一員としての悲しみの共有と云う感じに過ぎないだろう。我々三人の関係が美絵さんの自殺の原因であるなら、もっと具体的な指摘が遺書にしたためられている筈だった。

あの母親が何かを知っているとして、彼女は、その何かを、誰かに打ち明けるだろうか。圭に打ち明けるとは思えない。父親には話すかもしれない。無論、私や有紀に話すことはないだろう。

私は有休を取ったにも関わらず、手持ち無沙汰になっていた。検死で、遺体を警察に持って行かれた場合、どのくらいの日数、遺体は返ってこないのだろう、とPCを開いた。

検死と云う表現は一般的で、検視、検屍と書くのが本当らしい。そこからは法律用語の説明になるのだが、犯罪に関係なさそうな行政検視は、一般に刑事調査官あるいは検視官と呼ばれる特殊な訓練を受けた司法警察員が検視をしているのらしい。

ただ、その死亡の状況がなんらかの犯罪に関わっている疑いがある場合は、司法解剖に回されることもあるようだ。圭たちは、おそらく検視、検案、行政解剖、司法解剖など、その取扱いは行政区によって違いがあり、今ひとつ検索しても、納得のいく説明が得られなかった。

結局、ネット上での情報もまちまちと云う事は、その管轄警察の都道府県の考え方で、扱いが相当違うと云うことのようだ。美絵さんの場合、どういう理由で、単なる自殺として片づけられなかったのか、私は疑問を持った。

ここまで考えて、初めて美絵さんが、どのような形で自殺したのか、私は聞いていないことに気づいた。何という不注意かとも思ったが、逆に、あの時点で、どうやって自殺したのか聞ける雰囲気はなかったし、聞いたからといって、気まずさが増すだけで、聞かない方が良かったのだとも気づいた。
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1020027jk.jpg


終着駅73 母親は、なにかを隠している


第73章

私は、美絵の母親に違和感を憶えた。おろおろするのが当然の状況で、厭に落ち着き払っているのが不思議だった。

直感的に、この人は、何か隠している。私は、そう思った。

その晩は、美絵さんの両親が残るということになり、私は早朝の代々木上原を後にした。

とりあえず、沈鬱な空間から開放された私は、周りの空気を一杯に吸込み、フ~ッとため息をついた。

何かがある。その何かは、全然見当もつかないけど、必ず美絵さんが自殺した原因はあるのだと確信していた。

意味もなく、三十歳に満たない女が、自分の命を縮める理由は、必ずあると思った。可愛い一人娘の藍を残す辛さ以上に、辛い、或いは屈辱的何かがあるに違いなかった。

あの母親は、その原因の全貌かどうか別にして、ヒントは抱えている感じだった。

仮に、私と圭の関係に関わる原因であるのなら、もっと違う雰囲気が流れていたはずだと思った。一種、憎しみのような空気があってもいいはずだが、そう云うものはなかった。

美絵さんに、何か都合の悪い、何かが起きたのではないのだろうか?

圭との夫婦関係であれば、何らかのかたちで、私たちの間にも情報は流れてきているはず。

圭だって、心当たりがまったくないと云うのは、いかにも不自然だった。美絵さんには、圭に知られたくない、何かを抱えて死んでいったのだろう。死ぬほど辛いと云う事は、どういうことなのだろう?

美絵さんの身に単独で何かが起きたと考える根拠は充分だった。まさかとんでもない詐欺にあったとしても、解決策が皆無ということはない。経済的なことなら、父親に必ず相談が行くはずだ。

美絵さんが積極的に殺人などを犯したという想像も荒唐無稽な推理だ。だとすると、美絵さんは自らの行動のせいで、何らかの破廉恥な事態に陥ったのだろうか?圭に隠れて薬物に手を出したと云うのも想像しがたい。

そうか、生き恥を晒したくない何かが起きたのだ。

強姦魔に襲われて、そのシーンをビデオ撮影されて脅かされていたとか、よくある卑劣な強姦魔の強迫を描いてみたが、かなり陳腐な話に思えた。

そういう場合、美絵は被害者なのだから、必ずしも自殺に結びつくとも思えなかった。夫婦関係が気まずくはなるだろうが、子供のことも忘れるほど重大な辛さとは言えないだろう。
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1020022jk.jpg


終着駅72 あの字は美絵のものだったし・・・


第72章

私は映子にメールを入れ、身内の不幸があったので、今日は取りあえず有休を取ると伝え、代々木上原の圭の家に急いだ。美絵の遺体は、検死の必要があると云うことで、所轄の警察が運び出していた。

沈鬱な空気が、圭の新居を包んでいた。座っていたのは、美絵さんの両親と圭だけだった。そこに私が加わったからといって、特に会話がはじまると云うものではなかった。

「しかし、あまりにも言葉が少ない」美絵の父親がぼそりと口にした。

「圭、遺書はあったの?」私は、初めてのように聞いてみた。

「遺書も、今は警察が持って行ったから、ここにはないけど、『辛くなったので死にます。藍のことよろしくお願いします。』それだけなんだよ」

「それだけ?」

「あぁ、それだけ」圭も沈鬱な面持ちで訥々と口にした。憮然たる態度が、何も知らなかった間抜けな亭主の姿を見せていた。

「ふーん、それだけ。どこか身体でも悪かったのかしら?」

「いや、そんなことはあり得ない。いつも、きっちり家事はしていたし、藍の育児にも精を出していたし・・・」

「お父さまたちは、何か心当たりあるのでしょうか?」

「いや、まったく…」美絵の父親も憮然と答えた。

それから先は、まさに陰鬱な通夜状態で、誰も声を出すものはいなかった。

「あなた達夫婦に何事もなかった。美絵さんに、これといった厄介な病気に罹っていた形跡もない・・・・・・。美絵さんに限って経済的な事情なんてないでしょう。こういうことを不用意に言ってはいけないけど、本当に自殺なのかしら?」

「まさか、遺書があるんだよ、あの字は美絵のものだったし・・・・・・」

「私も見ましたが、あれは美絵の字です。」義父さんは断定的に語った。

「そういえば、藍ちゃんがいないけど、どこにいるの?」

「何も知らずに寝てるんだよ。なんて説明しようか、さっきから考えているんだけど・・・・・・」

「病気で突然死んだのよって、話すしかないわ」私が来て初めて美絵の母親が口を開いた。

たしかに、それしか選択肢はないのだけど、語り口が、いかにも事務的だった。
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1010765jk.jpg


終着駅71 


第71章

『なに!圭、今なんて言ったの!』

『美絵がさ、死んでるんだよ。どうしよう?』

『救急車呼んだの?』

『いや、まだ呼んでない』

『呼びなさいよ、助かるかもしれないでしょう!呼ばないなんて変じゃないの!』

『頭がおかしくなってるんだ!姉さん助けてくれよ』圭は半泣き状態で、電話で訴えていた。

『遺書はあるの?』

『ある』

『読んだの?』

『なんて書いてあるのよ』

『辛くなったので死にます。藍のことよろしくお願いします。』

『それだけなの?』

『それだけ、理由は“辛い”だけ…』

『その遺書はそのままの方が良いわね。兎に角、救急車を呼ぶの、それから、美絵さんの実家に電話するの、分った、電話を切って119番。それから美絵さんの実家よ』

幾分落ち着きを取り戻した圭が、手順を間違うことはないと思った。ただ、圭の今夜と云うか、その日の足取りは刑事に聞かれるに違いなかった。そうだ、正直に私の家にきて、色々相談事をしていたと話すように伝えようと携帯を鳴らしたが話し中だった。

漸く圭に繋がった。先ほどよりも圭の声音は落ち着いていた。

『いい、私のマンションにいたと正直に言うのよ。弟が姉に、愚痴を言いに来た、相談事を持ってきた、そういうことは沢山あるんだから。良いわね、嘘は極力つかないことよ』

私は何度も念を押した。圭も、その理由は理解したようだった。

……これで良い。当面はこれで疑われることもない。ただ、美絵さんが、幾つも遺書を残している可能性はあった。現場になくても、実家に手紙が送られているかもしれないのだから……

全然安心なんかじゃない。でも、美絵さんが、他の誰かに、遺書らしきものを送っていたとして、それは妄想だと強弁することは可能だった。まさか、私と肉体関係があった客観的事実の証拠を並べることなど、出来る筈がない。
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1010890j.jpg


終着駅70 圭が残していった精液の残滓が


第70章

それから1年、私は圭の肉体を堪能していた。

有紀も時折、参加することで性的欲求を満たしていた。圭の怒張に変わりはなく、その都度、私を、時に有紀を絶頂に導き、二人の姉に性的満足を与える健気なマシーンとして存在し、彼自身も、そのプロセスにおける快感を大いに堪能していたようだ。

考えるまでもなく、私と圭の関係は姉弟という近親相姦なのだから、社会的な批判中傷の対象なのだけれど、当人たちにとっては、一般的なセックスフレンドの関係と何ら変わりがなかった。むしろ、それよりも利害関係がない、ピュアな関係に思えているのだから、不思議だが、案外、禁断の世界なんて、こんな感覚なのかもしれない。

不確かな関係ではなく、家族と云う絶対的血脈によって裏打ちされた関係なのだから、世間でいう不倫関係よりも数段親密であり、安定感があるのは、当然かもしれない。このような関係が、母親と息子、父親と娘でも成り立つだろうし、家庭内と云う閉鎖空間で起きるのだから、秘密はかなりの範囲で隠匿されるのだろう。

なぜ、このように安定した近親相姦関係を、世間は忌避したのだろうか、不思議でさえあると思うようになっていた。おそらくは、遺伝上の異常が起きること、そして、血脈が強ければ強いほど、純化してしまい、交雑の強い遺伝子を生みださないことが影響しているのだろう。

有紀と圭の関係にも、それは当てはまるわけで、3人の姉妹兄弟は、異様に仲が良いわけだけだと開き直っていた。三人が、どれ程親密であるか、第三者の想像からはかけ離れていることも、どこか愉快だった。善良な市民でありながら、社会に背を向けた行為をしている事が、愉快と云うのは健全ではないのだけど、不健全の味の方が癖になるのだろう。

その上、時々、有紀とふたりでレズビアンな関係を結んでいることも、世間に知れ渡りようはなかった。

このまま、三人は、その関係を維持して老いていくのかと思うと、社会の倫理とか習慣なんてものは、欺瞞に満ちたものかもしれないと醒めた気持ちまで抱いた。

このような日々が永遠に続き、そして三人は何ごともなかったように、老いて口をつむぐ。

今夜も、そういう一日の一つが終わり、圭は私の部屋を出ていった。

圭が残していった精液の残滓が、シャワーを浴びる私の腿を伝って流れ出た。

私は時折、この流れ出る圭の残滓を、目撃、感じるたびに、圭の子供を産んでみたい衝動を憶えたが、流石に、それを実行する勇気はなかった。

でも偶然ピルの効用から外れた、私の卵子が、圭の精子を受けつけることもあり得る。その時は、迷わず、どんな子が産まれるかなど寸借なく、産んでみたい気持ちになっていた。

その夜、寝ついた時間に携帯がけたたましく鳴りだした。また有紀が一夜の宿を求めて鳴らしてきたのだろうと、気怠く携帯に耳をあてた。

『姉さん、ヤバいよ、美絵が自殺しちゃってる…』圭の声が、か細く震えて、耳に届いた。
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1010888j.jpg




終着駅69 姉妹が半裸でセミダブルのベッドで

第69章

その夜有紀は、“寝る時間がないよ”と言いながら、何度となく浅く眠り、目覚めては、ビアンな愛撫を要求した。

私が抱く、圭への疑惑の話は中途半端なまま、有紀は歪んだかたちで性欲を満たそうとしていた。昔の有紀に対してなら、いい加減にしなさいと言っていただろうが、彼女の過度な状況を思うと、好きなようにさせるしかなかった。

数回に一度、有紀は思い出したように、私へのビアンな行為は忘れなかったが、有紀のように積極的に、その快感の中に埋没は出来なかった。

34歳と32歳の姉妹が半裸でセミダブルのベッドで眠っている光景をカシニョールの版画の女が見つめていた。彼女の表情には、なんて虚しい行為に走っているの、と冷めた目で見つめているようでもあり、出来たらキャンバスから抜け出して仲間に入りたいと言っているようでもあった。

結局、有紀が本格的に眠りについたのは、午前4時を回っていた。

そして午前6時、飛び出すように部屋を出ていった。芸能界で売れると云う事は、時間に追われる事であり、あれでよく自分を見失わないものだと、送り出しながら私は考えた。

圭への疑惑に何らの解決も見られなかったが、それよりも、有紀が安らぐ場を提供したことに満足した。

二人のビアンナ行為は、急場の代用品であり、有紀が本格的にレズビアンの世界に埋没している女だとも思えなかった。きっと、彼女はノーマルな行動様式に、何らかの恥じらいを感じてしまう感性の持ち主なのだと思った。

それよりも、時々マンションに泊まりに来ていいか、と有紀が出がけに言った言葉の方が重みを持っていた。有紀のことだから、時間が出来たら、連絡もなくエントランスの集中案内板を押す可能性があった。

圭と鉢合わせする事態になることもあり得ると私は思ったが、その時はその時だ、見知らぬ関係でもないのだから、それはそれで良いのだろう。

時々、圭を有紀に奪われる杞憂も感じないわけではなかったが、裏切られ続けている美絵さんに比べれば、充分に救いがある感じがした。

時計は午前7時を回っていた。今さら僅かな睡眠をとるよりも、シャワーを浴びて、ゆったりと朝の時間を愉しんでみることにした。

圭の心の中に、どのような複雑なものが隠れているのか、私に把握できることには限界があった。正直、直接本人を問い詰めたとして、圭が、自分の心の中を、適切に表現できるかどうかも疑問だった。

圭がペンネームで使っていた「鬼塚啓二」と意味不明な手紙を送ってきた「鬼塚みやこ」が同一人物、つまり、圭であったとして、私にどんな損があるのだろう。現実に実害はゼロなのだから、疑惑の虜になるだけバカバカしいのかもしれなかった。

有紀にも話さない方が良かったのかもしれない。変に動きすぎた結果、話が複雑になるだけのようにも思えていた。現に、再び圭を有紀と共有するリスクまで抱え、有紀のバイセクシャルな生き方につき合わされる羽目に陥っているのだから、私のどこかに、冷静さを欠いた神経が拡張しているのを感じていた。

もうこれ以上、圭への疑惑を追及するのは止めるべきと、私の中で結論が生まれた。

ただひたすらに、圭のペニスが勃起して、その怒張で、私を官能の世界にいざなってくれる事だけを享受すれば良いわけなのだから。

圭が何を思って、私のバギナに怒張を挿し込んで、性戯を尽くす事実を重要視すれば良い。おそらく、継続的に続けていけば、その快楽が絶えることはないだろう。
つづく

いつもクリックありがとうございます!

FC2 Blog Ranking
アダルトブログランキングへ

P1010995j.jpg




プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

最新記事
rankig
応援してくださいね!

FC2 Blog Ranking

目次

cover-1.jpg

人妻のからだ 』(中編)

終着駅 』(長編連載中)

リンク

最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
12 | 2015/01 | 02
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

アルバム
RSSリンクの表示
検索フォーム
QRコード
QR