第67章-1「それは奇怪な話だよね。流石の姉さんも参ったわけだね」有紀は小籠包を一口で口に運び、フウフウいいながらワインを間に挟み、瞬く間に三個平らげた。残った二個に目を走らせながら、酢豚に箸を伸ばした。
「ここの小籠包いけるよね。イイよ全部食べちゃって。昔から、アンタのその癖直らないね」私は、笑いながら、空になったワイングラスに注ぎ足した。
「収入が増えても、私の食欲、いや、食い意地は全然変わらない。そして、性欲も同じくらいに変わらない。でもさ、そっちのほうは完璧にご無沙汰。今夜は欲求不満、涼ねえさんに慰めて貰おうかと思ってる」有紀が色っぽく笑った。
「私で、その火が消せるのなら、お手伝いさせていただきますよ」私も怖気ることなく答えた。
「姉さんって、なんでも水とり紙みたいに受け入れちゃうよね。そういう強さって、どこから生まれたのかしら」
「有紀がナイーブ過ぎるだけよ。それでて、私を奇妙な世界にまで引き入れたのは貴女なんだから」
「それはそうだけど。でもさ、禁断の果実を食べたのは、姉さんの方が先なんだから・・・・・・」
「あれはさ、圭にまんまと罠にかけられたようなもので、不可抗力のようなものよ。まあ、私の不注意というか、親切心が仇になったのよね」
「それにしても、鬼塚って名前が一致したからといって、圭が、その差出人不明の手紙の犯人だと断定するのもな~・・・・・・」
「それが一番だけど、偶然にしては、鬼塚はないでしょう?」
「たしかに、佐藤とか、鈴木なら、偶然で済むんだけど、鬼塚じゃね」
「そうなのよ。欲目なしで推理する限り、圭の仕業であるわけよ」
「そうなると、アイツは何の目的があって、こんな意味不明な手紙を姉さんに書いたわけ?」
「それが想像つかないから、有紀の知恵を借りたいわけよ。アンタは奇怪な世界のことでも、シナリオの世界で書くんだから、推理するの得意じゃないのかなって、思ったわけよ」
「う~ん、その辺は違うんだと思う。シナリオの場合、はじめっから、リアルとは違う目標に向かって書き出すから。圭の問題はリアルの中に、ポツンと奇妙が不自然に入り込んでいるんだから、観客に解釈不可能な問題を投げかけるようなもの、シナリオでもあり得ないことよ」
「そうなのか、じゃあ無理だよね」
二人は、堂々巡りする話題に疲労感が支配的になり、互いに口数が少なくなっていった。圭が犯人だとして、その対応まで話せる段階には至りそうもなかった。
「お風呂入ろうか?」私は、有紀が必死で眠気と戦っている状況を察した。バスルームで、どのような行為が二人に待ち受けているのかわからなかったが、有紀に任せて、それに反応していけば良いだけだった。
有紀の指先が、マッサージ師のような動きで、私のボディーソープをまんべんなく塗り込んだ身体に、色気を排除したような真面目な感じで動き回っていた。
出来たら、バスタブの縁に座るとか、横になって受けたいようなマッサージだったが、有紀は、私に立位を求めていた。
つづく
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