第77章「母親が、わだかまった感じがしたと、姉さん言ったよね」
「そういう感じだったけど、特に訳があったわけでもないけど」
「こういう問題は、その時の感じが大切なのよ。だから、姉さんの勘を前提に、考えておくことが必要だと思うの。仮によ、単純に圭の行動とかへの不安を美絵さんが持っていたという話なら、その心配ごとは普通なら義父さんにも伝わっていても良いわけでしょう」
「たぶん、普通なら、そうなるかな」
「ところが、父親は、その情報をまったく共有していないわけよね。てことは、美絵さんの疑惑は根も葉もないレベルだったわけでしょう。もしかすると、もっとよく確認するとか、話し合ってみるとかのアドバイスをするのが普通だよね」
「仮に、美絵さんが疑惑を持ったとしての前提があるのだけど」
「良いのよ、すべては推測なんだから、前提なしで、話は進まないから、前提はすごく大切なの」
「それで、仮にそうのようにして、美絵さんがお母さんに相談したとして、どうなるの」
「ここからは、私の作り話よ。」有紀は私の承諾を待つように一拍おいた。
「わかった。ここから先はシナリオライターの話として聞くから」
「その相談を受けた母親が、常軌を逸したアドバイスをしたら、どうなるかしら?」
「常軌を逸したアドバイス?貴女も仕返しに浮気しちゃいなさいとか?」
「そう、ズバリそうだった場合を想定してみると、美絵さんが死ぬほど辛い事態に嵌る可能性はあると思うの」
「美絵さんが、仮によ、圭への面当てで浮気をしたからと云って、そのことで、良心の呵責に耐えかねてなんて言わないでよ。昭和初期じゃないんだから」私は、有紀の推理が、ズバリ的中しないことを祈りながら、明るく振る舞った。
「勿論、面当てで浮気したとすれば、溜飲を下げるでしょうね。或いは、浮気した相手が、思ったほど満足できる男でなければ、少なくとも、その男を相手にする浮気はやめようとするわよね」
「でしょうね、折角リスクを冒してする以上、いろんな面で、圭より優れた男じゃないと、逆に哀しさが増すばかりだろうからね…」
「そこよ、問題は、そこなのよ」有紀は、推理の佳境に来ていることを示すように、珈琲を一気に飲み干した。そして、勝手に、冷蔵庫を開けると、ワインのボトルを手に戻ってきた。
つづく
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