第78章「飲まずに語るのはちょっと無理ね。私ってさ、アルコールが入った方が、頭は冴えるみたい」
「で、早く有紀の推理ってのを聞かせてよ」
「これはあくまで、私の連想による作り話だから、外れている可能性は高いからね」有紀は、その言葉を数回続けて繰り返した上で話し始めた。
「私さ、圭たちの結婚式に出ていた時、美絵さんのお母さんの態度が、凄く気になっていたのよ。特別、変な行動を取ったとか、そういう意味じゃなく、喜色満面だった出席者の中で、お母さんだけは、どこか浮いていた。目立ったわけじゃなく、逆に目立たな過ぎて変だったのよ」
「そうね、私は、美絵さんのお母さんって、チョッと暗い人なんだな、と思っただけだけど…」
「そうとも取れるけど、こういう事態を迎えると、彼女の態度と、美絵さんの自殺の間に、何かあるんじゃないかと邪推してみたの」
「邪推なわけね」
「まあ邪推だよね。雰囲気が暗いだけで、何か、いちもつあるように思われるのは心外でしょうけど、可能性を探る意味では、美絵さんの関係者としては、一番臭いよね」
「で、美絵さんとお母さんが、どんな問題を抱えていたと想像してみたの?」
「あのさ、美絵さんのお父さんって、結構いい男だよね」
「そうね、大学教授みたいな雰囲気があるわ。実際は、かなり気さくな人だけど」
「そこよ、その意外性を持つ男って、だいたいに女にもてるものよ」
「たしかに、それはそうね」
「つまり、お父さんは女遊びが激しかった。なにせ事業家としてもかなりのものなのだから、どの程度か具体的なことは不明だけど、お父さんの、その性癖に、お母さんは長年苦しんできた、と想定したの」
「ふん、ありそうな話だね。でもだからと云って、美絵さんの自殺とどう繋がるのよ」
「ここからは、まったくの連想ゲームね。お父さんが、女にもてる素材を多く抱えていて、お母さんは、その女遊びに長年苦しめられていた。ここまでは、我々の観察とか、世間の常識から想像できる範囲でしょう」
「そうね、噂話の根拠にはなるね」
「その根拠を唯一の拠り所にするのだけど、美絵さんが、圭の行動に疑惑を持った場合、普通は友達とかに相談したりするだろうけど、美絵さんは世間体を気にして、友達には相談せず、母親に相談した」有紀が、私に、その考えに異論はあるかと云う視線を送ってきた。
「相談相手が、母親と云うのは、大いにあるね」私は有紀の連想に同意した。
つづく
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