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終着駅505


第505章

「あぁ、閃きね。それは、秘密…じゃなけどね。例のカテーテルが入ってくるまでは、いつも通りだったのよ。何となく、深夜の儀式で、何かが変わるかも、と云う非科学的な期待があったんだけど、何だ、変りないのねって、ガッカリしていたの……」

「それから、何かが起きた?」

「そうなの」

「どんな、何か?」

「あのね、苦しかったのよ」

「アソコの中が?」

「アソコと言ってもバギナじゃなく、子宮の方がね。
生理痛とか、排卵痛とかあるじゃない、それよりも、もう少し、チクチクと痛んだの。
なんだかさ、鋭利な精子の尻尾が、子宮の内側から、チクチク刺している感じなのよ」

「そんな馬鹿な……」

「そう、そんな馬鹿なよ。浜田先生に、チョッと、チクチクするんですけどって言ったら、気の所為か、もしかすると、子宮の状態が変化しているのかもって」

「子宮の状態が変化する?」

「いや、浜田先生も、当てずっぽうに言っただけよ。でも、数分くらいジッとしていたら、子宮内が熱く感じられたの」

「なんか、変な薬剤混入させたんじゃないの?」

「いや、いつも通りの消毒薬が一緒に注入されただけらしいの…」

「で、今は?」

「もう、痛くも、熱くもないから大丈夫。でもね、私は、リアリティーを感じたのよ」

「どんな風に?」

「“涼”という女の精子が入ってきている。
ああ、私は犯されている。
処女受胎だって、そして、処置室で横になりながら、エクスタシーが疾風のようによぎって消えていったの……」

「そんな馬鹿な……」

私は、あくまで冷静に対応した。しかし、有紀は、夢でも見るように、恍惚と、その時の情景の中にいた。

「おそらく、私の子宮の中で、姉さんの精子が着地点に足場を作っている最中なの。
必ず、いえ、きっと今回は成功よ。
もし、今回で成功しなかったら、私は、人工授精を止めるから……」

「今回駄目だったら、体外受精か顕微授精をするって言ってたよね」

「いや、それもしない。
今回限りで、私の、“未婚の母計画”はオシマイ。私は“石女(うまづめ)”に徹して生きるの」

「なによ、舞台に上りたくなったの?」

「まさか、あんな辛い生活に二度と戻る気はないよ。姉さんは、辛いとは感じないの?」

「そうね、無神経なんだと思う。
雑誌の評論とか、福田君なんか、凄く気にしているけど、私は、何を言われても気にならないの。
多分、私の方が変なのだろうなって思っているけどね」

「面白いもんだよね。何時からか、姉さんと私、入れ替わった感じだよね。ああ、せめて、妊娠くらいは姉さんと肩を並べたかったのにさ……」有紀は大袈裟に、演じてみせた。

三週間後、有紀の妊娠を知るまでは、私は、絶望に苦しむ有紀を、慰めるシミュレーションだけをしていたので、祝福を表す言葉も行動も起こせず、呆然と立ち尽くした。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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