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終着駅501


第501章

「今日、例の内科の浜田って先生が言っていた事が気になっていたの……」

「何て言われたの?」

「5,6回で上手く行かない時は、残り僅かだから、次の手段を考えないとねって」

「それって、どう云うこと?」

「姉さん聞いてないの?」

「残された精子の量が、8回分だけだって……」

「どうだったかな。聞かされたかもしれないけど、どのくらいの量が残されてるのか、そもそも、興味がなかったから、覚えていなかったのかも……」

私は、嘘をついた。凍結保存精子が8回分しかないのは、櫻井先生から聞かされていた。

なぜ、その事実を有紀に伝えなかったのか。それには、私の意志が明確にあった。意地悪な意図はなかった。

私と、そして有紀の、運命の回答が出されるわけだから、運命論者である以上、ただ、その結果を受け入れれば良いだけだった。

「まあ、5回も試して、失敗だったら、私は妊娠できないって思えば良いわけだからね、それはそれで受け入れる積り」

「8回分あるんだから、残りも、全部挑戦すれば良いんじゃないの?」

「そうだよね。
ただ、浜田先生が言うには、5回の内に授精が起きない場合は、統計的には、それ以降も期待できないらしいのよ。
だから、どうしてもと云う考えがあるようなら、残りは、体外受精や顕微授精の選択が可能なように残しておいた方が、そんな話だったよ」

「常識的な結論だよね。
有紀の気持ちを別にすれば、私は、竹村の凍結保存精子で、自然妊娠に近い方法での授精だったら、心から歓べると感じていたの。
でも、体外受精とか、顕微授精となると、なんだか、強制的な受胎って感じになって、運命的ではなくなるのが、どうも納得できないかなって……」

「私も、その考えに賛成。
子宮に精子を注ぎ込む程度なら、リアルさはないけど、自然の流れに、途中省略で、横入りするようなものだからね。
それこそ、上手く行くかどうか、運命だもの。だから、そうでなきゃ駄目なのよ。竹村さんの精子が、まあ、この女の子宮でも良いかぁって思ってくれなきゃ、私の立場もなくなるし……」

「有紀が、竹村の精子を頂戴って言ってきた時は、正直、何を考えているのか、見当もつかなかったからね。
でも、不思議だけど、今になると、上手いこと、バシッと決まれば良いなって、思ってるからね」

「仮の話だけ、“ゆき”と産まれてくる子は、本当は腹違いの兄弟姉妹なのだろうけど、従姉妹関係で育てたいけど、構わない?」

「構わないけど、どうして?」

「生まれてきたことで、法的に問題が起きたりするのは嫌だなって思うから……」

「あれでしょう。死後認知とかいうやつよね。その点が、厄介になるかもしれないって、金子さんは……」

「どうして?未婚の滝沢ゆきが売りなのに、その父親が判っちゃったら、意味ないのだから、認知の要求なんてするわけがないでしょう。
それとも、彼は、私のこと欲深い女だと判定したのかな?ケシカラン!」

「違うの、私が、こう云う場合、生まれた子に、竹村の権利は相続できませんかってね。その流れで、出てきた話だよ」

「それで、こう云う場合認知可能なの?」

「不可能ではないけど、現実的には不可能に近いかな。死後認知って、その認知確認の判定を検察官がするんだって。
竹村の毛髪とかがあれば、それでDNA検査ね。本人のがなければ、近親者、我が家で言えば、“ゆき”のDNAと照合する。
それから、当該死亡者と、そういう人間関係にあったと云う証明のようなものも必要になるかもよ」

「随分と公になっちゃうし、父親が判っちゃうから、その考えはパスだね」有紀は、思った通り、竹村の財産云々に興味はないようだった。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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