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終着駅22 オーガズムが完全に抜けきらない股間


第22章

 シャワーを浴びながら、まだオーガズムが完全に抜けきらない股間をボディーソープで丁寧に洗った。

 …そういえば、アイツ、また射精していないわ。なんて男なの、訓練の上と云うのは変だわ、それ程経験もしていない癖に…

 …生まれつきなのだろうか?それとも、隠れサディズムなのかしら?いや、サディストだから、遅漏癖があるなんてこともないはずだし…

 そんなことを考えながら、洗い流すたびに、腰を引いてしまうようなオーガズムの小さな波が何度となく押し寄せ、私を翻弄した。

 正直、これ程のオーガズムを感じたセックスは経験がなかった。何故なのだろう?圭とのセックスがこんなにイイのは?理屈なんか考えなくても良いけど、やはり、考えてしまう。近親相姦と云う状況が、精神的に高揚感を持つために起きるのだろうか?

 他人の口から聞かされたら、“エッ、まさか!”と叫んでしまいそうな非倫理的な行動なのに、自分が超えてしまった感覚では、“別に”と云う感覚程度で、取り立てて罪の意識に眠れぬ夜があるわけでもなかった。

 バスタブに半身を沈め、目を閉じると、心地いい睡魔が押し寄せた。流石に、深く寝ることはなかったが、何度もウトウトする、この心地よさは、30年の人生の中でも、味わったことのない、奇妙な安心感をともなっていた。

 案外、この安堵感一杯の性的生活は、私の退屈だった人生に花を添えてくれるのかも?と一人笑みを浮かべ、乳房や両脚の状況を眺めていた。

 「姉さん、ステーキが来たよ。早めに出てきてよ」ガラス越しに圭の声が聞こえた。

 思った以上にボリュームたっぷりなステーキに舌鼓を打った二人は、チョッと休憩タイムと、どちらともなく了解するように、どちらが先か判らない間合いで眠りについていた。

 誰かの声で私は目覚めた。誰かではなく、圭の声なのだが、洗面所付近で、声を殺して電話をしているようだ。盗み聞きする積りはないけど、結局圭の声は聞こえてくる。美絵さんとの電話のようだった。

 『今夜は夜通しになりそうだよ。ウン、わかってるよ、明日の夜、君の家で食事会って話だろう。大丈夫、忘れてないよ。二日酔いかもしれないけどさ』その後、圭は美絵さんの話を聞いているらしく、ウンウンを連発していた。

 『そろそろ、戻らないと部長がウルサイからさ。ウンウン、愛してるよ、じゃあね』やれやれ、私は圭が愛しているまで言っている婚約者との電話を聞かされる羽目になったのだが、特に文句の言える立場ではないのも承知していた。

 そして、圭を愛している度合いは、私と美絵さんのどちらが強いのかなど、どうにもならない比較に頭が動く自分のバカバカしさに、呆れながら気の抜けたコーラを飲んだ。

 「あぁ起こしちゃった、ゴメン。美絵からの電話だったんだよ。連絡しないと、アイツ大騒ぎするからね」

 「おやまぁ、モテる人は違うわね」私は、冗談交じりにからかってやった。

 「モテてるのとは違うよ。美絵ってさ、世間体をひどく気にする女だから、かたちにうるさいんだよね。電話連絡さえ、チャンとすれば、俺は品行方正にしているって思える女なんだよ、今さら言っても仕方ないけど、母さんにそっくりだよ」

 「だから、自然にアンタも惹かれたのよ。かたちを重んじる人は、つき合うの楽よ。何を望んでいるのか、だいたい分かるんだから。こちらが、かたちと云うものの情報さえ持っていればね」

 「なるほど、そういう考えもあるね」

 「大いにあるわよ。仮に、圭に女が出来たとしても、奥さんの立場を尊重する態度を捨てない限り、そういう人とは修復可能なのよ」

 「そう云うことか~、姉さんって、何でも知っているよね。どうして、同じ姉妹でも、有紀ねえさんとあんなに違うのかな」

 「アンタ、そんなことまで気にしているの?」

 「そうだね、俺って、一番下で、一番弱い立場にいたから、常に観察の日々。観察を怠ると、いつもトンデモナイ目に遭わされていたからさ」

 「へぇ、そうなんだ。それは、あまり気にしていなかったな~。なるほどね、弱い立場ほど観察の目は注意深くなるわけね。でも、それって、一定のIQがある場合でしょう。有紀見ていると、そんな気もする」

 「そういう面もあるかな?有紀ねえさんって、めちゃ成績悪かったよね。俺、不思議で仕方なかったな。涼ねえさんは優等生で、大学まで卒業一直線。有紀ねえさんは、高校も半分でやめてるし、変な劇団に入ってウロチョロするし、今だって、フリーターみたいな仕事、したりしなかったり、なんでだって思ってたよ。否、今でも考えたら奇妙だよね」

 「圭と私が勉強できて、有紀が出来なかったのは、有紀が子供の頃から、色んなことに興味を持つ子だったからよ。興味が沢山あるから、勉強に使える時間がなかっただけじゃない。きっと、私たちの知らないこと、沢山知っている筈。頭の質は同じでも、向かった方向が全方位だったのよ。どこかで、何時か花が咲くかもしれないよ」

 「いつか、花ね。遅れてきた新人女優とかで、大ブレークするかもしれないね」

 「そうそう、有紀の演劇、三回くらい観たけど、悪くはなかったわ。意外に、大ブレークはなくても、渋い貴重な脇役になるかもしれないからね」

 「そうなんだ。姉さん、3回も舞台観に行ってやってるんだ。俺、一度もないや」

 「だったら、有紀に、気が向いたから、今度公演でもある時知らせてって言ってごらんよ。有紀のアンタを見る眼が、コロッと変わるから」

 「コロッと変わられるのも気味悪いけど、一度は観た方がよさそうだね」

 「そうよ、お姉さんなんだから、弟なら一度は観てあげないと」

 「わかった。ところでさ、さっきの話の続きだけど、美絵と結婚したあとの話だけど、どうなっちゃうのかな?」圭が蒸返してきた。

 正直、私は迷っていた。肉体は永遠に圭のペニスによるセックスを求めていた。しかし、それが不都合な問題を引き起こすリスクがあることも、理解していた。

 「簡単に返事の出来る問題じゃないでしょう?アンタ、よくよく考えた上で言ってるの?」

 「うん、感情的に言っているかもしれない。ただ、こういう事ってさ、考えて決めることなのかな?」珍しく、圭が正論を口にした。

 「たしかに、考える問題じゃなさそうだけど、何かアクシデントが起こった場合、どうなるのか、考えないのも、おかしいでしょう。少なくとも、二人とも高校生じゃないんだからね」私は、そのようなことを口にしながら、本心では、関係の継続を望んでいると白状している、と思った。

 「関係がバレルとか、そういう事態のことだよね?」

 「そういう事よ。言訳なんて通用する話じゃないからね」

 「仮に、そうなったら言訳はなさそうだよね。その上、姉さんが一番責められるかもしれない。そうだよね、たしかに手がない」

 「でしょう。欲望とかで、魔が差したなんてことも言える状況じゃないのよ。すべてを承知した上で起こしてる確信的不倫になるのよ」

 「俺たちの関係って不倫かな?」

 「まあ、正確には不倫じゃないけど、他の言い方ないでしょう?」

 「そうだね、表現する言葉のない関係か。言葉にないような現実ってあるんだね」

 「なに感心してるのよ、バッカじゃないの」私は呆れたように笑った。圭も吸い込まれるように笑い、その勢いで、私を組み敷いた。

 初めて圭の唇が私の唇を塞いだ。息つきをさせない激しい口づけが、私の休息中の女を蘇生させていった。
 つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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