第14章―2
強めのシャワーを浴びながら、自分が、圭の欲望に関わらず、もう一度、あの怒張でオーガズムを味わいたい情欲がふつふつと残されているのを感じた。
……そう、まだ圭は二度目の射精はしていない。きっと、もう一度エクササイズをしたいと言うに違いない。言わなければ、私が言わせるように仕向ければ、それで事は成就するのよ……
私は、奈落に落ちていっている自覚はゼロだった。“行きがけの駄賃”と云う言葉があるけど、そんな意識すらなかったのだから、セックスカウンセラーの役得に過ぎないと思った。
二人は夢中でピザをパクついた。ほとんで、無言に近い状態で、二人は腹ごしらえをしていた。どう考えても、これで、滞りなく家路につく二人であるわけはなかった。二人の空間には、次なる結合が今夜のフィニッシュになるのだと云う共通の認識が横たわっていた。
圭の食欲は旺盛だった。このパワーなら、私がギブアップするまで、何度でも勃起が可能な男に見えた。
「圭、半分あげるよ、食べて」私は、大ぶりのピザに悪戦苦闘していた。圭が、口の中のピザを飲み込まないうちに、手を出してきた。私は、圭の食欲におぞましさを感じる時があったが、いま、圭の旺盛な食欲が頼もしく見えるなんて、なんて人間は勝手な感情の動物なのかと思って苦笑いしていた。
「なに笑ってるの」
「特に。ただ、頼もしいほど食欲あるンだ、と思ってさ」
「今夜は特に食欲あるよね。緊張していた時には、全然感じなかった胃袋が、急に騒ぎ出したからね」
「リラックスして、出来そうかな?」
「多分、大丈夫だと思う。姉さんとのセックスより、美絵とのセックスは緊張しないからさ」
「でも、痛がられたら、困るンじゃないの?」私は、幾分意地悪な質問をしてみた。
「いやっ、それはない。姉さんが言うように、一気に貫いて、痛みより、感動を生むほうが良いンだってわかったから…」
「そう。出来るだけ早く、一気呵成に完遂しなさいよ」私は、圭と美絵さんのセックスにエールを送りながら、感情的には割り切れないものを持っている自分を感じていた。
……こんな秀でたセックスマシーンを絵美さん一人に占有させて良いのだろうか?25歳の圭の精力は無限に近いし、持っている肌合いも最高だし、持ち物にも不足はない……
……その上、気配りまで出来る25歳なんて、そうそう居ない。美絵さんには勿体ない原石になる。つまり、彼女に磨く器量はないのだから、宝の持ち腐れなのよね。……
……だったら、その宝が原石である時点から、磨いてやるマエストロの私が、非公式に役得を得るのは当然よね。どうせ、圭は美絵さんとのセックスで行うことは、生殖であり、セックスの二義的価値を見つけることは出来ないわけなんだから……
……だったら、その二義的価値を私に向けさせてあげるのは、そんなに悪いことではないはずだわ……
無口になった私を訝る圭が、きっかけを探すように、歯を磨きに洗面所に消えた。
「圭、私にも歯ブラシちょうだい」他人が聞いても理解できないような言葉でも、圭には意味が通じる。
速攻で、「ン」と云う声と共に、歯磨きのついたブラシが差し出された。
「ありがとう」私はそれを受け取り、ぼんやりと歯を磨いた。まだ、自分の意志で、“もう一度挑戦する”と言えないであろう圭の為に、私は口火を切ってやった。
「エクササイズの続きする?それとも疲れたかな?」
「続けて欲しい。まだまだ、知らないことの方が多いはず。何度でも教えて欲しいよ」圭が言う。
互いの利害は完全に一致していた。こんな相性の好い、男と女が結ばれない方が余程不自然。明らかに倒錯した自己弁護だと知りつつ、敢えて毒に浸る自分を選択する方が、心地が良いと思った。
つづく
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