第20章-2
「ゴメン、つい上手く出来たのでいい気になり過ぎたかもしれない…」
「なにも、謝る必要はないけど、初めにセックスサイクルの癖をつけると、後々面倒になるらしいわよ」私は、誰かから聞いた話のように語った。
「それって、美絵に飽きるってこと?それで、間が空くようになると、浮気していると疑われるとか?」
「そうね、直接浮気の疑惑にまではいかなくても、自分への興味が薄れてきた、と感じるでしょうね」
「セックス頻度と愛情は比例するって、これって法則なのかな?」
「まさか、そんなものないわよ。女の側の受けとめ方、感情論よ」
「でも、結果は同じだよね」
「そうなると思う。一緒に暮らし出したら、圭だったら毎晩やりそうだものね」
「まさか、毎晩はないでしょう。でも、たしかに、今よりヤル機会はぐんと増えるね」
「そこに山がある、そういう条件反射みたいなことも起こるわよ」
「でも最近は、新婚でも、頻繁にセックスしない夫婦が多いって言うでしょう」
「だからって、圭が、その統計上のヤラナイ夫婦になるとは限らないわ。特に、オーガズムを感じる以前は、女の側の疲労は少ないから、夫の求めに、幾らでも応じられるものよ」
「そうかあ、考えなしに自然の成り行きにしておくと、姉さんが言う様になるような気もしてきた」
「でしょう。だから、初めの内からセーブする癖を自分に覚えさせることね。愛情が減ってきたかもなんて奥さんに感じさせるのは、賢明じゃないと思うけど…」私の言葉は、個人的感情抜きではなかった。言外に、ヤリタクなったら、私ともセックスすればいいのよと云う気持ちが隠れているのは間違いなかった。
その晩は、そこで圭との会話は切り上げた。それ以上語ることで、もの欲しそうになる自分が露わになるのは嫌だった。
その後、1週間が経過し、木曜日の昼間に、圭からメールが入った。
『その後、姉さんのシナリオ通りの話。美絵は納得してくれました。俺が何とかする責任があるのだから、恥を忍んで教わってきた。誤解されるくらい、嬉しくなって頑張った点、誤解を招いたようでゴメンと誤っておきました。すべて、問題なく解決です。ありがとうございます。ところで、未だ教わりたいことが沢山あるのですが、カウンセリングお願いできますか。明日の金曜の夜、美絵は会社の飲み会があるので、僕の方は好都合です。よろしくお願いします』
何という図々しい弟かと、読みながら思ったが、預金通帳に振り込まれた圭の100万円はキラキラ輝いていた。カウンセラーの義務という考えが、隠れ蓑なのは判っていたが、その報酬が私の心を軽くした。
まさか圭が100万円で、私を一生セックス・マシーンとして飼い殺すわけでもないだろうから、偶発的報酬の存在だった。
『だいたい、全部教えた筈よ。それに、美絵さんが驚くまで行っているのだから、圭の知識は充分だと思うけど、1日のコンサルタント料金としては高額すぎて、気も引けるから、もう暫くカウンセリングする義務はありそうね。万障繰り合わせますので、時間場所等ご連絡ください』少し間をおいてから圭にメールを入れた。
虚偽のシナリオは美絵さんに通用したようだ。騙されていたい精神状態の女なのだから、概ね理解できれば、こと細かに疑うより、信じる方が楽だと云う恋愛の心模様を見ているようだった。
翌日、映子さんの“お茶しない”と云う誘いを断り、私は圭がチェックインしているシティーホテルに急いだ。
二人ともに、馴染のない恵比寿のホテルは、想像以上に豪華なロビーがあった。まさか映子が私の後をつけて居るとは思いもよらなかった。映子と私の間に利害関係は存在していないのだから、当然だった。そんなことを想像もしていない私は、圭の待つ17階に向かってエレベーターに乗った。
この映子の行動が、私が様々な疑惑の混乱に拍車をかけるのだが、そのことは、追々話すことにしようと思う。
つづく
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