第484章その夜、有紀と田沢君のお母さんに、月水金、通いの保母さんをやって貰う件の話をしていた。
「どう思う。私は、ずいぶん助かるんだけどさ……」
「特に、問題ないと思うけど、田沢君のお母さんが、高坂尚子のよう存在になる心配はないよね」
「あり得ないと思うよ、男がいるわけじゃないし……」
「心配のし過ぎだよね」
「ただ、この家を全面的に、田沢君のお母さんに一時的に解放することは、問題ないのかなって不安は、チョッと過った(よぎった)んだけど……」
「そうか、そういう風には考えなかったけど、そういうことになるね……」
二人は、竹村家にいた高坂尚子の残像があっただけに、杞憂めいたことなどを話したが、当初から、育児を田沢奈津子さんに任せる気になりながら、話をしていた。
「お互い、これといった貴重品は持っていないから良いのだけど、姉さん、例の現金、まだ、家に置いてあるの?」
「ええ、引っ越しの時のまま、段ボールの中に新聞紙に包まれてあるけど。あれは拙いかもね」
「拙いわよ。金庫らしくない金庫なんてないのかな?」
「さあ、考えたこともないけどね」
意外に、家具調の耐火金庫で、これはと言えるものはなかった。金庫、金庫と主張しているものを置く気にもなれなかった。
「劇団の金庫に入れるのも不適当だしね。税務署の査察が入った時、金庫の中身確認された時まずいからね。やっぱり、貸金庫じゃないの?」
「あれさ、意外に入らないのよ。忘れたけど、今のと別に、二つか三つ必要になるもの・・・・・・」
「そんなにあるわけ?」
「金持ちなんだね。給料出すのやめようかな」有紀は笑った。
竹村との結婚が、こんな環境まで用意してくれるとは思いもしなかった。金塊を換金した残りも追加されたし、株式の譲渡金も追加されていた。
「この家の支払いって未だでしょう?」
「うん、未だ金子さんの方から連絡来るはずなんだけどね・・・・・・」
「幾らくらいなんだろうね?」
「解体費用を含めても、5千万以内におさまるような話だったよ」
「今の姉さんにとっては楽勝な金額かな?」
「何も考えていないよ。そもそも、私のお金じゃないからね、リアリティーがないのよ。そういえば、神楽坂のマンション、あれ、どうしたらいいと思う?」
「売るんじゃないの?」
「初めはそう思っていたけど、都心に棲むところがあるという環境も悪くないかなって思うし、また現金が増えてもね・・・・・・」
「それもそうだね。ランニングで収入があるほうが、消費してしまえば良い話だしね」
「そう、贅沢に消費すれば、税金の心配せずに済むからね。有紀の生活費は、この家に関してゼロで良いよ。我々ってブランド品は、ワイン以外に興味ないから、所詮生活費はしれたものだからさ」
そんな話をしているとも知らず、”ゆき”は、スヤスヤと、私達の会話を子守唄にして眠っていた。
「竹村ゆきも、幸せな子だよね。生まれながらの大金持ちだものね」
「大金持ちは言い過ぎよ。ちょっとだけ金持ちの家。その程度じゃないの?」
「そうだ、大金持ちで思い出したけど、この次の演目で、金持ちの若き未亡人の役に嵌る役者が居なくても困っているんだけど、姉さん一肌脱ぐ気ないかな?」
有紀は、私が言下に断ることを想定した口調で話した。
つづく
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