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終着駅467


第467章

翌日、有紀の最後の休みの日ということで、部屋でノンビリ過ごそうと思っていた二人だが、午後になると、幾分退屈になってきた。

「ねえ、吉祥寺の家って、土台は出来たとか言ってたよね?」

「だったね。車庫だけがある土台だから、コンクリートの打ちっ放しじゃないの?」

「コンクリの石垣か~、ろう城する家。そういう感じになっちゃうのかな?」

「タクシーで一回り、眺めて来ようか?」

「あぁそれ良いね。それで、帰りに、遅い昼食とって、夜は中華ってコースにしようよ」

タクシーが吉祥寺の工事中の家に近づいた。打ちっ放しのコンクリートの土台が、他を圧する雰囲気で更地の真ん中に鎮座していた。

シンボルツリー、“樅の木”は堂々とした姿で、私たちを迎えてくれた。

「思った以上に、堅牢に見えるね」私は、“樅の木”の存在をたしかめてから、基礎部分のコンクリートの土台部分に目をやった。

「そう、幾分、周りを威圧している感じがしないでもないね」有紀は、特別、感想めいたものは感じなかった風に答えた。

「安全なようで、目立つ感じもするけど……」私は、成金が張り切って家を建てようとしている、厭な感覚があった。

「ほかに、何もないからじゃないからじゃないの?」有紀は、それ程の違和感を抱いていないようだった。

「そう言えば、塀も全部壊したんだね」

「そうそう、変に見えるのは、塀がないからよ。塀が出来て、門が出来て、何本か庭木が植えられれば、そんなに威圧感はなくなるんだと思うよ」

「そうね、今さら、変えてとも言えないからね。金子さんに、お任せと言っておいて、後から、こんな筈じゃないは顰蹙ものね」

「そうだよ。それに、あのくらい、家に入る手掛かりがないってことは、防犯上は意味あるし、女三人だけが棲む家だからね、私は、問題ないと思う」

「そうね、女三人だものね。女二人の時間も多い家なんだから、堅牢なのは当然か~……」

「そうだ。姉さんが入院している時に思ったんだけど、あの土台の部分の車庫、二台分だったよね?」

「別に、敷地内に二台分のスペースを確保するって金子さんは言ってたけど……」

「駐車スペースはどうでも良いけど、姉さん、車買わない?」

「車?アンタこそ、買ったら良いんじゃないの?」

「私も買うけど、姉さんも買った方が良いかなって」

「運転、私、苦手だからな……」

「でも、子育てするんだよ。姉さん、ママチャリなんて、絶対に乗れないでしょう?」

「あぁママチャリね。あれは、絶対に無理だね」私は、もの珍しく、二人を眺めながら走り去るママチャリを見送りながら、答えた。

「そうだね。言われてみると必要かもね。教習所で少し練習しようかな」

「そんな必要ないよ。近々、私の車が届くからさ、それで練習すれば良いよ」

「車、買ったの?」

「そう、劇団専用駐車場を三台確保したから、一台は座長ように確保されたのよ。だから、ビンビン頑丈なヤツ買ったから、ぶつけても大丈夫だよ」

「やだよ。新車、怖くて運転なんか出来ないよ」

「平気平気。そもそも、姉さんのお金のようなものから出したんだから」

有紀は、“帰ろう”と言って、待たせていたタクシーに乗り込み、新宿に向かった。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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