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終着駅476


第476章

三時間ほどで、衣類、雑貨、食器の類の段ボール詰めが済んだ。

私は、買ってきたコーラで、サンドイッチを流し込みながら、改めて部屋を眺めた。

本や雑誌は束ねて縛れば良かったが、ポスター類の扱いに頭を捻った。

冷蔵庫の中身は、飲み物を除いて、すべて廃棄の袋に突っ込んだ。その他の電化製品は、荷造りせず、其の儘にしておいた。

問題なのは、PC周りの機器類の扱いだった。ネット環境は整っていたが、ルーターなどはレンタル品だろうから、有紀に任せた方が良さそうだった。

少し冷えてきたので、エアコンを回し、窓を閉じた。有紀に、部屋の片づけ状況をメールしようと思ったが、夜、話せば良いのだからと、携帯を閉じた。

引っ越し当日の前に、一度くらい、有紀が自分の部屋に戻り、自分でチェックすれば良い程度に、収まった。

時計をみると、まだ2時だった。ベッドに寝ころんで、身体を休めていると、父から電話が入った。

『元気だったか?その後の、体調の方はどうなんだ?』

『そうね、回復途上だけど、徐々に良くなっているみたいよ。そっちは、変りないの?』

『ないね。あまりにも、何もなくて、退屈なくらいだよ』

『そうか、忘れていたけど、父さん、会社辞めたの?』

『あぁ予定通り、株主総会が終わり、無事辞任して、めでたく退職したよ』

『あぁそうだった。ごめんね、自分のことで精一杯で、お祝いもしてないんだよね。近々、盛大にお祝いの会を催すからね。じゃあ、もう、毎日が日曜日になっているわけなの?』

『そう、毎日が日曜日だね。何か、手伝うことでもないかね?』

『ないね。そうそう、会社の話、簡単にしておいたけど、円満解決で、私も無事、めでたく退職したから。そういえば、私も、父さんと同じで、毎日が日曜日だったっけ。でも、“ゆき”を引き取ったので、育児に追われているから、案外、日曜の割には忙しいかも』

『そうか、じゃあ、神楽坂で二人暮らしと云うことか?』

『有紀が、殆ど泊まっているから、三人暮らしね』

『賑やかで、愉しそうだね』

『愉しいまでは行かないけど、ザワザワしている。そう、あのさ、もう直ぐ吉祥寺の家が出来るのよ』

『随分早いね、もう出来るのか?』

『そう、来月の初めに引っ越しになると思うの』

『それじゃあ、手伝いが必要かな?』

『残念ながら、殆ど必要ないと思うよ。そうだ、引っ越しの当日と、次の日くらい、父さんのところに泊めて貰えるかな、三人』

『無論、どこにも行く予定はないから、構わんよ』

『あのさ、いま、思いついたんだけど、母さんに二日間、“ゆき”預かって貰えると思う?』

『さて、どんなもんかな?下手に、寝た子を起こすような事はないとは思うんだが……』

『そういう心配もあるけど、もう私は無職だから、他人に預けているとか、保育園にとか、そう云う状況じゃないから、寝た子が起きても問題ないと思うけど?』

一旦電話を切った父は、母に確認の電話を入れた。

“私の都合を聞く話じゃないでしょう。喜んで、お引き受けするって伝えてよ”と母に言われたと、父は笑いながら、再度電話を寄こした。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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