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終着駅472


第472章

あまり深く考えずに、会社に顔を出そうとした行動は、寸前で押し止められた。

顔を出して、出社の段取りなどを、社長か総務部長と話し合った後だったら、私は、ズルズルと社長のペースに乗せられていたに違いなかった。

奥さんの看病に専念したいと云う三上社長の退任理由は消えた。だから、私が後を継ぐ話を断る理由は充分にあった。

しかし、後継者問題を断ることと、私が退職してしまうことは、繋がる話ではなかった。

正直、理由は気づまりになったから、と云うことなのだが、そう云う曖昧な退社事由は不適切だった。留意しようと云う行動に出られてしまう。

会社を辞める理由は、別途用意しなければならない。

私は、そこまで考えて、急にお腹が空いていることに気づいた。

時計をみると、既に10時を過ぎていた。有紀が帰ってきてから、何かを注文しても良いのだが、なにか食べさせろと、胃袋が怒っていた。

冷蔵庫を開けてみると、想像以上に食べ物が詰まっていた。そう、有紀がしこたま買い込んでくれていたのを思い出した。

そろそろ片づけてしまった方が良いものもある筈だったが、手近な梅お粥のパックをボールにあけて、電子レンジで温めた。

美味しいとまでは言えなかったが、怒っている胃袋は、それなりに落ち着きを取り戻していた。

有紀がいつも通り帰宅するかどうか分らなかったが、レタスとキュウリとロースハムのサラダを作りだした。

冷凍庫を覗いてみると、賞味期限の近づいている小エビがあった。ミスマッチかもしれないけど、モッタイナイ精神で、それも戻して、サラダに加えた。

それをラップして冷蔵庫にしまい込んだ。しかし、それだけの作業で、私はかなり疲れてしまった。

4カ月寝たきりの生活を送った後の体力って、こんなにも落ちるものなのだろうか、私は幾分心配になってきた。

たしかに、頬も削げていたし、お尻から下は全体に肉がなくなっていた。まだまだ、働く状態の人間ではないことを自覚した。

そうか、これが会社を辞める理由になる、と気づいた。

体力の回復が、思うに任せない。この体力で、子育てと職場復帰は、到底無理だ。

子育ては、待ったなしの相手がいることだから、放棄することは出来ない。

そういう理由で、退社を申し出ることは、理屈の上で成り立つ。

「これで行こう」

私は、また、自分の考えを口に出して、ソファーに寝ころんだ。

入院中からの癖だろうか、身体を横にして、目を瞑ると、いつの間にか寝ていることが多かった。なんとなく、気怠さは、常時居座っていた。

抗がん剤治療後の患者の回復過程について、村井先生から、記憶にあるような注意事項や、症状を聞くことはなかった。

単なる回復過程の道筋なら良いのだけれど。ふと、不安になったが、いつの間にか、やはり、眠りに就いていた。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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