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終着駅468


第468章

有紀の休暇が過ぎ、私は村井先生の診察を受けていた。

「うん、順調に回復していますね。二カ月くらい、この状態が続けば、心配は殆どなくなるでしょう。
竹村さんが、病気に罹っていたこと自体、無かったような記憶になりそうな回復具合ですよ。」

村井先生は、大満足な顔で、診察室の椅子を揺すっていた。

「そうそう、もう少し後ですが、櫻井先生が、妹さんも入れた、四人の祝賀会、愉しみにしていますと伝えてくれって、言っていましたよ」

「あぁそうでした。そんなお話しましたよね。是非、セッティングしてください。有紀の方は、忙しそうなので、先生たちのご都合と合うか、ちょっと心配ですけど……」

「いや、きっと、一番忙しいのが妹さんですよ。我々は、ある程度スケジュールが見えていますから」

診察を終えた私は、予定外だったが、ふらりと、会社に顔を出す気になった。

映子か、社長に、挨拶だけでも出来れば良いくらいの気持ちで、タクシーを降りた。

タクシーを筋向いで降りた私は、会社の玄関付近に、ただならぬ雰囲気を感じた。

“なにか、慌ただしい、何かが起きている”

私の身体に、久しぶりで、神経の糸が、ピンと張りつめた。

業務上の慌ただしさとは異質だった。どことなく、厳粛な雰囲気も漂っているいた。

私は、一本横道に退避して、映子にメールを入れるつもりで、携帯を開いた。

その時、メール着信の振動が私の手の中に伝わった。

『社長の奥さんが、一時間ほど前に亡くなりました。
通夜、葬儀などの日程は未だ決まっていません。
私は、これから社長宅に行きます。
涼さんは退院したばかりだから伝えなくて良いと、三上が言っていましたけど、体調が許すなら、ちらりとでも、明日でも自宅の方に顔出してやって下さい。
あの人、焼きもち焼くほど、涼さんの話ばっかりだから・・・・・・。
きっと、凄く喜ぶと思いますので・・・・・・』

私は、文章から、映子の複雑な心模様を感じた。

社長から三上となり、最後には、あの人と表現していた。

映子さんが、三上社長にどっぷり浸かっているのが判った。そのことは、特に問題はなかったけど、業務上の、影響がなければいいのだけどと、余計な心配が頭に浮かんだ。

・・・・・・さて、どうしようか?知らなければ、それまでだけど、知らないとは、もう言えない。
明日、顔を出すのが妥当だろうが、通夜や葬儀の日取り等が決まっている。
そうなると、そのセレモニーにも出席しないわけにはいかなくなる。でも、出席するだけの体力、気力に自信はない。
どさくさの今夜行ってしまった方が、その後の態度を留保できる。しかし、この服装は・・・・・・。

私は、こういう日に限って、と思いながら、淡いピンクのスーツに目を向けた。

私は、取りあえず、自分の部屋に戻ることにした。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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