第459章「一卵性双生児のテレパシーのようなもの、私たち姉妹でも起きる現象なのかな?」
「どうだろう。以前聞いた話だけど、同じ生活リズムに住んでいる家族は、同じ時間にトイレに行きたくなる、そう云うの聞いたことあるけど、それは、人間の生理のメカニズムから、証明できそうだよね。
でも、同じ課題を抱えて、それに、同じくらい気持ちを向けた場合、考えが重なることは、あるんじゃないの」有紀は、ゆっくりと話した。
「それはあるわね。でも、どこか女子高生の同調心理に近い感じもする」
「あれ、生理が感染するような?」
「まあ、そう云うこともあるし、まだ、情報が足りない子供の場合は、考えることが同じで、答えも同じって、結構あった気がする」
「そう言えば、あの頃は、そうそう、そうでしょうって、同調してたよね。あれは、同調圧力だったのかな?」
「両方あるんじゃないの。まだ、単純な思考経路しか持っていなかったので、答えが同じになる。時には、同調した方が楽と云う、彼女たちなりの知恵。二通り、あるんじゃないの」
「そうなのかもね。でも、きっと私たちは、同じ考えに耽っていても、きっと、違う答えを導き出してしまう。その差は、何だろうね?」
「そうね、きっと違うでしょうね。答えまで同じだと、人間関係は不都合だらけになっちゃうしね……」
「あの時、圭の肉体を共有したように?」
「あれは、どうだったのかな?あれは、アンタの悪戯心が起こした事件じゃないの?」
「悪戯心っていうか、姉さんだけ狡いって、腹が立ったからかな……」
「そう言えば、中学くらいまでは、何でも、私と同じもの買って貰ってたよね」私は、その当時、その行為を疎ましく思っていた。
「自我がなかったのよ。自我が出来てきてからは、パタッと、その欲望はなくなったもの」
「どうして、自我が出来ちゃったの?」
「処女喪失の翌朝から」有紀が、冗談のような、本気のような顔つきで、当時を思い出すような表情を浮かべた。
「なんか、取って着けたような自我誕生の神話だね」
「幾分美化しているけど、タイミングは、その時。それはたしか……」
「初体験が、そんなに印象的だったの?」
「そうね、悪い意味で、印象的だったかな」
「どういうこと?」
「痛みも快感もなかった。先ず、一つ目の印象は、相手の男が馬鹿に見えたこと。二つ目の印象は、これで、姉さんに先んじたって印象……、だったかな?」
「女になれた、そんな風には思わなかったの?」
「うん、思わなかった。姉さんに勝ったぞって感動で幸せだったかな。それからかな、姉さんと私は違うんだって思ったのは……」
「その相手を好きだったわけ?」
「いや、只の友達の友達。成り行きで一回だけ。だから、相手は、私が初体験だったことすら知らない筈」
「ふ~ん。はじめて聞かされたけど、不思議な自我の誕生だね」
「きっと、姉さんの真似ばかりしたがる自分に嫌気をさしていたんだと思うの。
でも、キッカケがなかった。偶然だけど、その経験で、明白に姉さんと私の人格が分離した」
「でも、その時の私が、処女だって保証はなかったのに、決めつけたわけね」
「そう、決めつけね。もしかして、姉さんは処女じゃなかった?」
「大丈夫よ。有紀の自我誕生のエピソードに水を差すような事実はございません」
私は、有紀の指先に指先を絡めた。
つづく
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