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終着駅457


第457章

「姉さん、このまま寝た方が良い?」

有紀は、私が脱ぎ捨てた服をクロゼットに仕舞いこみながら、聞いてきた。

「いま、何時かな?」

「まだ、夜の9時だけど……」

「なんだ、まだ、そんな時間なのか……、起きるよ、少し、お腹も空いてきたから」

「私もお腹が空いてるから、なにか取ろうか、それとも、作る?」

「そうだね、食べに行くのは疲れそうだから……。でも、病み上がりに中華もね……。コンビニのサンドイッチくらいにしておこうかな?」

「そんなもので良いのなら、作るよ」

「だって、材料買いに行くんだから、出来合いで充分じゃない?」

「大丈夫、材料は、しこたま仕入れてあるんだよ」有紀は、手柄を挙げたような言いっぷりで、そそくさとベッドルームを出ていった。

二時間以上、横になっていた所為か、疲労感は消えていた。やはり、筋肉の衰えはかなりのもののようだった。

この調子だと、内臓も弱っている可能性があるのだから、食べるものや量にも、気をつけなければならなさそうだった。

脱毛してしまった頭髪は、既に3センチほどに生え揃ってきていた。

部屋に入ると直ぐに、ウィッグは取り払ったので、気のせいか、頭が寒かった。

そういえば、人毛のウィッグは病院出入り業者がオーダーメイドで作ってくれたものだったが、あの代金はどうなっているのだろう。

退院時、有紀が支払っていた400万円近い支払いの中に入っていたのだろうか。

それにしても、有紀は、退院時の費用を500万円くらいに見積もった根拠はなんだったのだろうか。

「有紀、さっき、入院費の清算してくれたけど、あのお金、建てかえてくれたの?」

「そうよ。例の金塊を売ったお金から、払っておいたの」

「そうか、そう言えば、金塊があったんだっけ。でも、よく500万円くらいって判ったね」

「あぁ、あれね、田沢君のお母さんが見積積算してくれて、メールで知らせてくれたの」

「田沢君のお母さんが?」

「そう、彼女、昔、医療事務していたんだって。後で判ったんだけど、彼女の実家、病院なんだってさ」

「へー、そうだったんだ。お父さんが、お医者ってこと?」

「それがさ、聞いてビックリだけど、お母さんが医者なんだって」

「へー、それも想像外だね」

「そう、現実の世界にも、色んなイメージと違うことがあるんだなって、つくづく思ったよ」

「そうなんだ、彼女の態度には、そんなエリート臭、全然しなかったのに、よほど人格が出来ているんだね」

「私も、そう思った。ああいう人が、この世に居るなんて、不思議な感じだけど、現に我々の目の前にいるし、“ゆき”の面倒を、痒い所に手が届く感じで見てくれているんだから。間違いなく、存在するのよ」
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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