2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

終着駅441


第441章

「母さんのような考えも一つだご思うわよ。でも、絶対真実ではないのよね。自分の子供を、どんな環境で育てるか、決まりはないわけ。
世間の習慣としては、母さん派が多いのも認めるわよ。でもね、私は、その習慣に依存したくないわけ。
自分の子供を育てる時には、依存という習慣を排除して育てたいと決めていたの。母さんに預けるということは、おじいちゃん、おばあちゃんに、育てられる子供になるわけでしょう。
それって、厳しく育てようが、甘やかして育てようが、子供は依存体質になってしまう。これは、子供が一定期間までは、環境に左右されて人間形成される科学的なエビデンスも確立しているから、事実なのよ。
つまり、私の理想は、頼るべき人が居なくても生きていける、独立心の強い子を望んでいるわけ。
だから、預ける場合でも、より他人であるほうがいいわけ。無論、子供の資質によっては、私の勝手な理想が、通用しないこともありうると思っているわよ。
でも、初めから諦める気は全くないということなの。
母さんに、その点を理解して貰いたいわけ。私の我儘な面も認めるけど、挫折するまでは、そのようにさせて。
お願いします」

私は、話すだけ話して、母に向かって、深々と頭を下げた。

話した内容が、自分の本心とかけ離れている事は承知していたが、屁理屈好きの母には通用すると信じていた。

もし、この状況でも、母が異論をさし挟むようなら、私の方には、切れる準備は出来ていた。

「アンタが、そう考えているのなら、私が口出すことじゃないようね。
特別、孫の面倒をみさせてくれと頼みこむ理由もないわけだからね。
まあ、時々顔を見せてもらえるから可愛いのかもしれないから・・・・・・。
アンタも、苦しくなったら意地張らずに、私たちがいることを忘れないで貰えれば良いのよ。私が言いたいのは、それだけよ」

一瞬、リビングに緊張が走ったが、”竹村ゆき”がタイミングよく泣き声を張り上げた。親孝行な娘だと、私は、そそくさと”ゆき”を抱き上げ、乳首を咥えさせた。

リビングには、一瞬にして団欒が戻っていた。乳首を咥えさせたままテーブルに戻ると、父がそわそわし始めた。

「母さん、風呂は沸いているのかな?」父は目を泳がせて、母の返事を待たずに立ち上がった。

「なにボケているのよ。アンタがさっき、洗ってお湯を張ったって言ったでしょう?」母は、相変わらずの無神経で、機微に欠けた返事を返していた。

「そうだった。たしかに、ボケてきているかもな、母さん、俺がボケたら、どうするかね?」

「速攻で、介護施設へですから」間髪を入れずに、母は答えていた。

「父さん、そんときは、私が面倒みてあげるよ」有紀が、合いの手のように、言葉を挟んだ。

「有紀、調子の良いこと言わない方が良いわよ。この人、すぐ、信じちゃう人だからね」母が珍しく冗談を言った。

「最悪、仕方ないわよ」有紀も、冗談で返した。

「仕方なくか?」父が不満な声を出した。

「そりゃそうよ、まともな父さんだけで大変なのに、ボケてるんでしょう?今でも、大変そうなのに、ボケてるんだから、地獄だよ。
でも、行くところがなくなったら、仕方ない。まさに仕方がない状況の典型のような話しなんだからさ」有紀らしい、乱暴な優しさの表明だった。

「それでは、お言葉に甘えさせて貰うよ。母さん、施設じゃなく、有紀のところだからな、忘れないでくれよ」廊下を歩きながら、父は大きな声で応じた。

「冗談と知っていても嬉しいんだろうね。有紀のところなんかに行ったら、鎖に繋がれちゃうんじゃないの」母は、次回に取っておくと言っていた、二本目の羊羹の包みを開けだした。

「母さん、まだ食べる気?」私は、本気で心配した。

「ダイジョブよ、このくらい。久々で、気持ちが高揚しているからね、きっと、アドレナリンが噴出しているのよ」

母の機嫌を心配する必要はないようだった。

圭が欠けてから、初めての家族団らんだったが、新居のマンションと竹村ゆきが、家族の緊張感を和らげていた。

誰ひとり口には出さないが、全員が期せずして待ち望んでいた雪解けムードを歓迎していた。
つづく

いつもクリックありがとうございます!
ブログ村 恋愛小説(愛欲)

アダルトブログランキングへ
FC2 Blog Ranking

P1010412parts.jpg

プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

最新記事
rankig
応援してくださいね!

FC2 Blog Ranking

目次

cover-1.jpg

人妻のからだ 』(中編)

終着駅 』(長編連載中)

リンク

最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
02 | 2016/03 | 04
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

アルバム
RSSリンクの表示
検索フォーム
QRコード
QR