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終着駅410


第410章

ネットなどの情報で知る限り、未熟児でも、産んだあと、一時だろうがカンガルー抱っこをさせてもらった、と多くの人が書いていたが、それはなかった。

私に、その体力、気力が失われていた為なのか、未熟児の状態がシビアだったのか、その辺は疑問だったが、明日にでも会えるようにしましょうと、櫻井先生が言っていたのだから、思い悩むほどでもないと思った。

「姉さん、おはよう」有紀がベッドに潜ったまま声をかけてきた。

「おはよう。少しは寝られたの?」

「寝られるかなと思ったけど、問題なく寝られたよ。いつもより、快適に寝られたくらい。赤ちゃんの様子は、どうだって?」

「うん、特別の問題はないけど、体中、チューブで繋がっているんだって」

「え~っ、それって危ないとか、そういうこと?」

「さっき、櫻井先生が話していったんだけど、そういうニアンスじゃないみたいよ。明日にでも、会えるようにしましょうって言っていたから」

「姉さんが明日なら、もしかすると、私が一番初めに、竹村ゆきちゃんを目撃したのかもね」

「えっ、有紀、赤ちゃん見たの?」

「うん、櫻井先生が、あとで、お姉さんに安心するように伝えておいてくださいって、NICUの部屋に連れて行って貰って、ガラス越しに見てきたよ。ほんの一分くらいだったけど」

「そうなんだ、ちゃんと泣いていたかな?」

「大丈夫、私には、元気に泣いているように見えたけど。ただ、たしかに、壊れそうなくらい小さかったのは事実。NICUを出る時、チョッと他の保育器の中を覗いたけど、もっと小さくて細い赤ちゃんも入っていたから、大丈夫だと思うよ」

「そう、まあ、明日には会わせてくれるって言ったのだから、大変なことじゃないんでしょうね。それで、父さんの方には連絡は?」

「しておいたよ。シナリオ通り、急に産気づいて、早産で1800gの女の子を無事産んだ。でも、お父さん達が、赤ちゃんに会えるのは、病院の許可が下りてからなので、直ぐに来ても、赤ちゃんには会えないかも。ただし、姉さんは元気ですって」

「きっと、今日中に母さんきそうだね」

「うん、余程のことがない限り、来るね。でも、個室だから、興奮しても、周りには迷惑は掛からないから、ふふふ」有紀が、その情景を思い描いて、小さく笑い声を上げた。

「そうだね、個室にしておいて良かった。でも、きっと、この部屋高いんでしょう、お金の方は大丈夫なの?って、速攻で聞いてきそう、ふふふ」

二人は、母親の噂話をしながら、小さく笑いあった。

「話は違うけど、思った以上に安産だったって言われていたけど、ご本人の感想は?」

「そうね、あらゆる事前の処置が良かったのだろうし、私の子宮の押し出す力が強かったようだからね、出てくるのも7掛けくらいの大きさでしょう。櫻井先生の説だと、筋肉体質も好影響だったのでは、そう言っていたけどね。いずれにしても、心して身構えた割には、出たのかな?って感じだったよ」

「そうなんだ。なんだか、そんなに楽なら、私も一人くらい産んでみたくなるな」

「誰と子供作るつもりなの?」

「まずは、その誰かを探すところからだよね」

「あら、有紀は、私に、もう結婚しちゃ駄目だって、言っていたでしょう?」

「そうだよ、結婚も浮気も駄目だって思っているよ、今でもね。私は、姉さんだけで、十分満足なんだから……」有紀の唇が迫った。

久しぶりに、有紀の貪るような舌の絡みに、いくぶん性的になったが、乳房に手がかかったところで、現実に目覚めた。

「そうだ、乳しぼりしなきゃ」

「えっ!乳しぼり?」有紀も現実に引き戻されて、私のオッパイを絞り出す指先を、身動きもせずに見つめていた。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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