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終着駅ー3



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第3章

 「アンタさ、女が怖いの?」
 「怖いってことはないよ。ただ、痛くないかなって思っちゃうんだよ。今まで、人を痛い目に合わせるなんて考えたことないしさ」
 「あのさ、痛いってのも、ふたつあんじゃないの?」
 「ふたつ?」
 「そうよ。二つあるのよ、痛みには。体が痛い場合、そして心が痛い場合ね」
 「でもさ、体が痛いのは、全員だけど、心が痛いかどうかは分からないよ」
 「そうりゃそうだけど…。でも、私が彼女だったら傷つくな、絶対に。それ以上入って来ない、覚悟しているのに。どうして、思いっきり終わらせてくれないの?私だったら恨むかもよ」
 二人の間に沈黙が続いた。
 「拷問みたいなものかな?」
 「拷問まではいかないけど、どうしてなンだろうって思うよね。どこか、私の何かが気に入らないのか。それとも、この人少し不能の気があるのかしら、とかね」
 私は半分冗談めかして、圭と性的な話をしていた。ただ、僅かにだけど、自分のバギナが変化しているのを実感した。深く考える事はなかったが、話しながら、圭がまだ大学生だった頃、寝起きの悪い圭を起こそうとした時に、圭の勃起したペニスを目撃したことを思い出していた。二十歳前後の男の朝だち勃起があんなに強圧的姿なことに、ショックを受けた記憶だ。
 「美絵が、涼ねさんだったら良かったのに…」圭がぼそりと口にした。
 「えっ?」私はちゃんと聞こえたけど、聞き返した。
 「あぁいや、なんでもない…。ただね、ねえさんが他人だったら良かったなって、ちょっと思ったんだよ」
 「私が他人だったら、なによ。デリヘル嬢の代わりでもさせようっての?」
 「まさか、そういう意味じゃなくて。結婚できるのになって思ってさ」
 「アンタ、ほんとは年上が好きなの?」
 「いや、そうでもないと思う。でも、涼ねえさんなら、何でも言う通りにしていれば、間違いは起きないからね。スッゴク安心なンだよ」
 「なによそれ。マザコンみたいなもンじゃないのよ」と言いながら、圭の自分への依存度に満足していた。その時からだろうか、自分の思うがままの人男が一人くらいいたって良いのではないか、相手にも異存はないのだろうから…。
 「マザコンとは違うさ。ちゃんと一人の人としてリスペクトしてるンだよ。親子関係とか兄弟とかの関係じゃないなんかだよ」圭の言葉は、偶然かもしれないが、姉としてではない私の存在を感じていると告白されているのかもしれない。そんな危険な雰囲気が漂いはじめた。
 「圭?まさか親子とか兄弟姉妹じゃない関係ってどういう意味?なんだかさ、アンタ、私に惚れてるンじゃないよね。まさかね、それはないね。アンタのオムツ取り替えてた姉さんに惚れたら気味悪いよね」私は、漂う空気に逆らわず、冗談めかして核心に迫っていた。
 「わかんない。惚れてるってのとも違う。ただ、姉さんって存在とも違う」
 「嬉しいような、迷惑なような話になってきたね。アンタと美絵さんのエッチをどうするって話だったのにさ」
 「たしかに。でも、涼ねえさんと話してるうちに、なんだか姉さんとの話の方が重要かも、なんて思ってきちゃうよ」圭も、奇妙な方向に話が進んでいく展開に心地よく戸惑い、その戸惑いの帰結にぼんやりと期待をもった。
 「親でもない、姉でもない、男でもない。ぶっちゃけ、女だってことじゃないの?」私もこの奇妙な空気の帰結を知りたかった。もっとざっくばらんに表現すれば、バギナの中で滲み出ている粘液が、どんな運命を辿るのか、早く知りたい気分だった。
 「そうよ圭、アンタさ、私の女に興味があるんでしょう。正直に白状しなよ」私は乱暴に畳みかけた。
 「かもしれない。でもそんな馬鹿なことが許されるとも思っていない。だから、気持ちがグラグラしてるンだよ」
 「だよね、アンタと私がそうなったら、近親相姦だよ。ああ何てことよ。デリヘルとエッチするより、百倍、美絵さんへの裏切りだよ」私は、自分が真逆の方向に仕向けている言葉を吐きながら、その逆の状況が生まれることを望んでいる自分を感じた。悪魔なバギナを私は持っているンだ、この時私は強く自覚した。悪魔なバギナを持つ女。
 「それは違う」圭が断定的に強い口調で否定した。
 「違うンだ、美絵への感情と涼ねえさんへの感情は絶対に違う。美絵への愛情と姉さんへの恋心は違う」
 「愛情と恋心か…」私は違うと思った。美絵さんに対する感情は恋愛であり、愛情にまでは至っていない。私への感情には愛情は混入しているが、男女の情緒ではない。多分、姉と弟の関係にありがちな血縁の安心感、至近な距離、そして親密性の問題なのだと思った。そこに、いびつであっても、男女関係が入り込んだときに、その関係性がどんなものになるのか明確な答えはないのだろう。それだけに、面白い試みだとは思った。他人ごとなら、充分にエンジョイできるエンタテインメントなのだけど、自分が主演を演じるとなると躊躇いが先行した。躊躇いと好奇心が綯交ぜになる中で、私は何か話さないと、圭が遠くに行ってしまうような気分だった。
 「ねぇ圭さ、私と契約する」私は契約の中身を告げず、唐突に切り出した。
 「どんな契約か知らないけどさ、姉さんとの契約にサインするよ。俺にも姉さんにも有利な契約内容なンだろうから」
 「そうね、誰も損はしない契約かな。いや、美絵さんに知られたら、誤解は招くかもね」
 「そうなンだ。でも誤解だったら、その誤解を解けば良いわけだし、なんとか修復可能じゃないかな」圭は、私の誘惑に抗う気はさらさらないようだった。薄々私の意図を察した感じがした。それだけに、契約の具体的内容に言及する必要も感じなかった。
 「出かけようか」
 「うん良いよ。俺が先に出るわ。北口のセブンでウロウロしているから」
 「わかった、出来るだけ早く行くから、先に行って」
契約内容を互いに一言も語らず、本当に意志は通じているのか、圭がそそくさと家を出ていった後になって、私は不安を憶えた。でも、賽は投げられた感じだし、行くところまで行くしかないのか、私はシャワーを浴び、勝負下着を身につけた。圭が下着に手を掛ける瞬間を想像しながら不安を憶えるのだが、行動は素早かった。
偶然のことだけど、半年やめていたピルを一週間ほど前から飲み始めたのは、何かの啓示があったのだろうか。そんなことを考えながら、今日の一粒を飲み込んだ。こんな出来事のために飲みだしたピルではないのに、なんという皮肉な薬効なのかしらなどと、意味もなく考えながら家を飛び出した。
 途中で妹の有紀に出会ったが、流れるように嘘を口にする自分に、悪い女、とつぶやいた。妹のことは言える私ではないが、有紀は男出入りの激しい女だった。30歳になっても、若い男を漁る生活をエンジョイしているのだが、貢ぐばかりで、得るもののない無駄な時間を過ごしている馬鹿な女だと思った。自分は違う。男に貢ぐなんて、人類の掟に逆らっていると思った。男は女のバギナに財産を注ぎこむもので、女がペニスに金銀財宝を捧げるなど、正義に反すると思った。だから、私の男遍歴は正義であり、有紀の男漁りは不正義だと思った。勿論、そんなことを考えながらも、似た者同士の姉妹だと理屈では理解していた。
つづく

プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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