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終着駅89 肉がぶつかる音がしていた


第89章

突然、音声が流れた。男の腰が激しく女体の間で躍動し、肉がぶつかる音がしていた。

女はしゃくりあげるように、悦びの声を上げ、当初の画面にあった、単に嬲られている女体とは異なる風情になっていた。

「どうだ、イイのか」男が勃起をねじ込むような態勢になり、女体の脚を大きく上に持ち上げ、腰を落とした。あきらかに、男の腰に力がこもり、膣奥を責めようとしている姿だった。

「イイです」女が答えた。美絵さんの声のようでもあったし、そうでないような声でもあった。圭には、その確認は可能なのだろうが、圭に聞く勇気はなかった。

「ほら、もっと良くしてやるぞ。股を目一杯拡げるんだ」男はサディスティックな響きで女に命じた。

「ほらほら、どんどん感じるだろう。ほら、ほら」そう言いながら、男も感じているようだった。

そして、男の動きが佳境に向かって最後の激しい動きに入った。

「いくぞ、いくぞ、美絵いくぞ」男は、感極まって、美絵と云う名前を語ったようだが、編集が可能なのだから、女が美絵であることを、ことさらに表現しようとしていた。

「あいつだ。ナオキだよ」

「ナオキって?」

「美絵の昔の恋人の名前だよ。美絵がつき合っていたのに、身体の関係がなかったナオキだよ」圭が、再び電源を切った。

再び、沈黙が二人の間に流れ、重苦しい時間が過ぎていったが、圭が何かを考えている様子だったので、私は、次の言葉を待った。

「奴にしてみれば、念願が叶ったわけなんだ。美絵に身体を許して貰えなかった出来事が、奴の人生を狂わせた。漸く、人生のリセットが出来たと、俺に見せびらかしたかったのかな…」

「見せびらかしたいって、そのナオキって人と圭は、どういう関係なのよ?」私は、圭の発言の意味が判らなかった。

「そう奇妙な友達だった。互いに、俺の方がお前より全てに上だって思って反発しあっているのを知っていながら、いつも仲良くつるんでいたって感じかな」

「そう云う事って、男の世界でもあるわけね」

「あったんだね。でも、受験では俺が勝ち、奴は負けた。勝敗は一旦決したけど、美絵たちグループとつき合い出したことから、美絵を巡って、俺たちは再び対立した。無論、静かな対立で、他人から見れば仲の良いグループを作っていたけどね」

私は、ああ、その頃が、有紀が言っていた、圭がブイブイしていた時期と重なるのか、と思ったが口には出さなかった。

「それで、はじめに美絵さんとつき合い出したのがナオキって人なわけね」

「そう云うことだね。まあ実際つき合い出したのは、社会に出てからだけどさ。俺の気分は、美絵を奴から奪ってやるって感じになっちゃって、かなりぐちゃぐちゃしたけど、最後には俺が勝った。いや、今になってみると、負けたのかも…」

「でも、その恋のさや当てがあるような状況で、美絵さんの身体は処女のままだったわけ?」

「そう、その点が奇妙なんだけどね。事実、美絵はバージンだったしさ」

「ふーん」私は、大まかな、圭とナオキとの関係を聞かされたが、釈然とはしなかった。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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