こんばんは!
終着駅の連載はまだまだ続きますけど、この辺で一服。
小説の師匠、饗庭龍彦氏の原作をもとに鮎川かりんが、
補筆加筆した「結衣との関係」中編の連載をはじめてみます。
終着駅よりも男女の愛のかたちを素直に表現した作品になれば、
と思っています。
これからもご愛読くださるようお願いいたします。
鮎川かりん
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結衣との関係 第一部 鮎川かりん
(原作・饗庭龍彦)第1章-1新しい女、理紗子と云う人妻を得たからといって、俺の女体狩人生活が特に変わったわけではない。しがない二流ライターの仕事もぽつぽつとこなしていた。ポツポツとしか仕事が来ないのだから、常にポツポツと仕事をすることになる。主に社会政治関連が中心なので、世の中が混乱すればするほど仕事が増えると云う因果な商売だった。
人の不幸で飯を食う職業。医者に、弁護士に、坊主が通り相場だ。しかし、その他にも多くの人種が、他人の不幸によって飯を食っている。ライターなんて職業も、その範疇だ。マルチ商法に引っかかった不幸な人々リストで飯を食うやつもいる。社会面の事件記者やルポライターも同様だ。警察官、消防士、自衛官も、かなりの範囲で他人の不幸で飯を食っている。社会保障制度に携わる政治家、役人、彼らも広義において不幸を餌に飯を食べている。つまりは、人間社会では不幸と云うものが日常茶飯事な出来事に過ぎないと云うことなのだろう。
仕事の時は、半日以上椅子に腰かけパソコンに向かい、コーヒーと煙草に囲まれる生活なのだから、健康に良いわけがない。時間が空けば、女とホテルにしけ込んで、セックス三昧なのだから、太陽に当たる必然性すらなくなっていた。かかりつけの医者からは、“臀部筋が相当弱っている、太陽に当たること、そして歩くことを心掛けろ”と注意を受けていた。まさか医者に向かって“セックスは臀部筋を鍛えないのか”と聞くわけにもいかず、余裕がある時は嫌々近所の公園を三周程度歩くことにしている。当然、晴れている日に歩くので、それなりに太陽にも当たるので、一石二鳥だった。
そんな或る日、俺は結衣と云う女に出遭った。東日本大震災後と福島原発事故発生以来、立て続けに仕事が舞い込み、一カ月半ぶりの臀部筋鍛錬の公園だった。既に初夏の陽ざしが公園に注ぎ、動かずに日陰にいると肌寒さが残っていたが、三周走り切った俺はうっすらと汗をかいていた。
いつもの水飲み場で顔を洗い、蛇口から水をがぶ飲みしようと近づいた時、水場は近所のママ軍団に占領されていた。
……糞!なんてことだ、いまいましい……
しかし、世の中早いもの順程度の常識は知っているので、少し離れた所からママ軍団が去るのを待った。五分、十分と待ってみたが、彼女らと、その子供たち軍団は、その場を立ち去る気配すらなかった。距離を半分に縮めて、彼女らに俺の存在を知って貰おうとしたが無駄だった。あきらめて、他の水場に行こうかと思った時だった。
「いつもあの人達、水飲み場を占領しているの」突然、後ろから声が聞こえた。
ふり返ってみると、三十前後の女が佇んでいた。その横には二歳ほどの女の子がしゃがみ込んでいた。どうも話の内容から水場占領のママ軍団とは異なる種族のようだった。
「いつも長いのかな?」
「たぶん、日が陰るか、誰かの子供がグズルまで、水遊びさせているの」
「プールみたいなものだね」
「そんな感じ、目の前のマンションの人達みたい」
「そう。それで、いつもアナタは迷惑しているわけだ」
「いつもは、もう少しゆっくり出てくるのだけど、今日はこの子が早くから“コウエン、コウエン”って煩いものだから…」そう言って、女は自分の子供に目線を向けた。
「ほら、マミちゃん、土を触っちゃだめよ。お手てが真っ黒でしょう」女は怒ると云うわけでも、注意すると云う程の気力も伝わらない気だるい声音で話した。
「ついてきて下さい、手を洗わせると良いですよ。僕も水が飲みたいしね」俺は、女の言葉に勇気を貰い、そこにママ軍団が居ることを無視するような勢いで水場に向かった。ふり返らなかったが、その女とマミと云う子供はついてきている気配だった。
「ちょいと失礼」俺は有無を言わさぬ強い視線を送り“どけろ!”と心で叫んだ。ママ軍団が突然の闖入者にたじろぎ、あっけにとられている間に蛇口を占領し、水を勢いよく出した。
「マミちゃん、先に手を洗いなさい」俺はマミという子供の祖父さんのような振舞いで、女の行動を促した。
女は俺の意図を嗅ぎ取ったのかどうか判らなかったが、その言葉には従った。ママ軍団は一歩水場から退き、遠巻きに逆襲のチャンスを狙っている視線を送っていた。委細構わず、今度は俺がガブガブと水を飲んだ。女たちの百倍無神経なオッサンを演じる事で、ママ軍団の逆襲の芽を摘み取った。
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