第1章-2マミと云う子供の手を洗わせている時、西に傾いた陽ざしが、女の下半身を透けさせた。少し太めな腿のシルエットを俺は垣間見たが、ただそれだけの事だった。二の腕なども太めだろうか、と目ざとく視線を走らせた時、女が季節外れの長袖を着ている事に気づいた。案外人間の目撃能力などとは、このようなもので、先程言葉を交わした女の長袖さえ気づかない程度のものだった。どうして長袖なのだ、紫外線対策だろうか等と考えたが、それは一時のことだった。
俺は水場から少し離れた芝生コーナーでひと眠りしたい気分だった。ただ、マミと云う子供の爺様の素振りをしてしまった都合上、“それじゃあ”と声を掛けて別々に行動する不自然さを憶えた。女もそれを感じていたのか、俺に寄り添うような態勢で、水場を離れようとしていた。
「しばらく一緒にいた方がいいみたいだね」俺は笑いながら、女に声をかけた。
「そのようです、アノ人達まだ睨みつけているみたい」女は怖がっているというよりも、俺の咄嗟の演技に気づき、一緒に愉しもうとする気配があった。
「少し先の芝生で寝転びましょう、そのうちに彼女たちも飽きますよ」
「ですね、ご迷惑でなかったら…」
「大丈夫ですよ、いずれにしても寝転ぶつもりでしたから」
「それじゃあ私たちも寝転びます、マミちゃんもう一度芝生だよ」女は子供に語りかけながら、なぜか楽しそうな声を出していた。
……なんとも奇妙な気分だな。ことの成り行きとはいえ、見知らぬ女と、その子供と芝生で寝転ぶか……
俺は委細構わず、芝生に寝転んだ。本当に身体を伸ばしたかった俺の身体は声こそ出さなかったが、満足感に満ちていた。数分間は記憶があったが、いつの間にか居眠りをしていたようだ。何か夢まで見たようだが、何の夢だったか覚えてはいなかった。ほんの僅かなまどろみだったのだろう、女と子供は俺に異常接近して、芝生の間から顔を出すクローバーを摘んでいた。
子供のまだ乳臭さと、女のパフュームらしき匂いが鼻孔をくすぐった。女と子供のニオイ包まれ、俺の男は僅かに覚醒していた。横座りした女の膝頭が時々割れ、白く肉付きのいい太腿が垣間見えた。性的に、俺の好みの太腿ではなかったが、観賞するぶんには肉付きが良い方が好ましいものだ。
「気持よさそうに寝てらしたわ」女が親しげに笑いかけてきた。
「あぁ何か夢まで見ていたらしい。まさか寝言は言わなかったでしょうね」俺は女の太腿の奥が見えそうだと思いながら、必死で目線を遠くに泳がせた。
「まだアノ人達居ますよ」
「そうだね。そろそろ、家に帰る時間ですか」
「いえ、特に急いではいません。ただ、蚊が飛んできているので、マミが刺されるかも…」
「そう、じゃあ僕も公園の出口まで一緒に行きますよ」
「スミマセン、なんか余計な事につき合わせてしまって」
「いやあ、ことの成り行きだからね、こう云うこともあるものです」俺はもう少し横になっていたい気持を払いのけて、女の心配につき合うことにした。
公園の出口に向かって歩き出すと、マミと云う子供が俺の指を掴んだ。突然のことに、俺は一瞬ぎょっとしたがマミと云う子供のなすがままにしておいた。
「マミちゃん、駄目よ、オジサンの手を握っちゃ」
「イヤっ!パパの手だもん」
「構いませんよ、柔らかくて気持が良い。そのままにしておけば良いですよ」
俺は子供の汗ばんだ小さな手のひらの捉われ人となり、強制連行される姿で公園の出口に向かった。ただ、2歳から3歳くらいの子供のパパは絶対に俺より断然若いのに、と訝しさはあった。しかし、あえて女に問いただす問題でもなかった。
つづく
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