第1章-3公園の出口にある交差点に出た三人に別れが待っていた。俄か祖父と孫の関係は終わろうとしていた。
「それじゃぁ此処でお別れですね。僕は左側だから…」
「ありがとうございます、何となく私も楽しかったです。さあマミ、オジサンにサヨナラしないとね」女がマミと云う子供の手を、俺の手から引き離そうとした。子供の指先が激しく俺の手の平に食い込んだ。
信じられない強さで、俺の手にしがみついた。一瞬、何が起きようとしているのか、俺は状況判断に迷った。マミと云う子供が俺と離れたくない理由が判らなかった。
母親と二人だけになるのを嫌っている様子もなかった。特に子供の身体を見る限り、虐待のような外傷も見当たらなかった。
「さぁ、マミ、オジサンの手を離しなさい」女は強く子供に言い放つと、力づくで手を引き離そうとした。その時、マミと云う子供の激しい叫びが交差点に響き渡った。当然、交差点で信号待ちをしている人々の視線が一斉に、俄か家族の三人に注がれた。
最悪な事態だ。知り合いから目撃されるかもしれない。俺は冗談抜きに、誘拐犯に仕立てられてしまう恐怖を感じた。
「ヨシ、マミちゃんわかったよ、オジサンがおんぶしてあげる」俺は咄嗟にマミと云う子供への懐柔に出た。
「さぁ行きましょう、家までつきあいますよ」俺は女に目配せをして、道案内を頼んだ。
「ご迷惑でしょう、家までなんて」
「今の状況の方がもっと困るよ。まぁ家の近くまで行く間に寝るんじゃないかな。どっちの方向ですか」俺は冗談っぽい口調で、女に道案内をするように促した。
「すみません、本当にご迷惑かけてしまって…」
「もう気にしなくて良いですよ。お互い、危機を乗り越える方が先決だしね」
俺がマミという子を背負い、女がその二人に寄り添って歩く。余程接近して見ない限り、仲の良い家族三人の散歩の姿だ。俺の背中でしばらく「パパ、パパ」と耳元で煩かったが、案の定、女の子は深い眠りに入っていた。
……それにしても、何故この子は俺のことを“パパ”と呼ぶのだろう。現実のパパを知っていたら、俺をパパだと勘違いするのは奇妙だ。パパと見知らぬ男との区別がつかない程幼いわけでもないのに……
余計な詮索だとは理解しつつも、先程垣間見た女の白い柔肌と重なり合って、どんどん妄想はあらぬ方向へ移行していた。
女の子の高めの体温は容赦なく俺を包み込み、背中に汗を滲ませた。
つづく
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