第90章「そうですか、昨日奥さんが証言した、一緒にいた知人と云うのは貴方でしたか。それで、奥さんとは何時くらいまで一緒でしたか」
「午後の六時を回ったくらいです」
「どちらで」
「Oホテルの部屋です」
「片山敦美さんの名前でチェックインした部屋にですね」
「えぇ、彼女が予約を入れたので、たぶん、その名前だと思いますが」
「それで、奥さんに変った様子はありませんでしたか」
「えぇなかったと思います」
まさか、敦美とセックスしていた状況から考えて、あれだけ欲情していたのだから、殺人計画とは似合わないとも言えなかった。
「それで、今日と云うか、昨夜、奥さんと再びホテルで落ち合う筈だったのに、奥さんがホテルに戻っていない。そして、今日になっても戻っていないので、変だと思って署に電話をなさった、そういうことですね」
「そういうことです」
「なるほど、おかしいですね、奥さんが行方不明になるのは」
「えぇ変です。特に旦那さんがあんなことになった後ですから、どう考えてもおかしいと思います」
「でも、あなた以外の約束があったと云うことはないのですか」
「それは分りませんけど、他に約束があったら、僕との約束をする理由がありませんからね。特に、僕が今日も会いたいとか言ってはいませんから」
「自宅の方は確認されましたか」
「いや、彼女の自宅の電話は知りません。知っているのは携帯の方の番号だけです」
「チョッと待ってくださいよ。取りあえず、自宅に電話を入れてみましょう」刑事が電話を掛けに席を外した。
その時、寿美からの電話が入った。俺は慌てて運転中のボタンを押した。誰かが見ていたら、幾分挙動が怪しく見えたかもしれないが、視線は感じなかった。
「たしかに誰も出ませんね。携帯も電源が切られているようだから、奇妙ですね」
戻ってきた刑事は、そう告げると、冷めた目の前の湯のみに手を伸ばした。
「やっぱり、家の方も駄目ですか……」
「今までも、こう云うことはあったのですか」
「いや、今までと聞かれましてもね、つき合い出して一か月程度ですからね」
「一カ月ですか……」
「そうです。SNSで知りあって、意気投合して、初めて会ったのが、ほぼ一カ月前ですからね」
「ほうSNSですか、お洒落な出会いですね」
「いやぁ年甲斐もない話でしてね」
「わかりました。こちらも、片山敦美さんの行方が判らないことを視野に、事件の捜査に当たりますが、何か、相場さんの方も変化があったら知らせていただけると助かるんですけどね」
「わかりました。何らかの変化があったら、すぐに連絡させて貰いますよ。あっ、出来ましたら、刑事さんに繋がる電話番号教えて貰いますか」
刑事は、紙切れに、担当課の直通電話らしき番号を記して差し出した。
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