第10章「つまり、アンタはシャブ入りのヤセ薬を飲まされていたってこと」
「まさか、どうして私に」
敦美の覚醒が緩んでいた。ショックを一時的に受けた神経が、ドーパミンとは異なる脳内物質を分泌しているようだった。
「俺が知るか、亭主に聞くしかねえよ。アンタは痩せたいと望んだんだろう」
「ううん、どっちでもよかった。それにそんなにデブなんかじゃないし……」
「じゃあ、どうしてだ、何で飲んだんだ?」
「分かんない、何となくかな。飲んだら気分が好くなったから飲んだのかな?あんまり憶えていないよ」
「それで毎日飲んでるってことか?」
「うん」
敦美は朦朧とした頭で夫から与えられた状況を思い起こしているようだったが、既に彼女の思考能力は薬に冒されていた。
「オマエ、メールに沢山嘘を書いていたね。亭主とは2年もしてないとか色々、それは全部嘘だろう?」
「ごめん、本当書いたら、会えそうもなかったから。でも、ダンナにセックスはさせてないよ」
「いや、嘘だ。オマエは亭主とヤッテル、毎晩ヤリ続けてる」
「違うんだよ、頭と心はさせたくないんだよ、でも、身体が助平になるの。だから、止まらなくなんのよ」
女は、辻褄が合わないことを話していたが、本人は、それに気づいていなかった。
「機嫌が好くなって、身体が疼く。嫌いな男とでもヤリタクなるの。仕方ないんだよ、気がつくと、ヤッテルんだから」
「それで毎晩、朝までやり続けるのか?」
「アイツは出したら直ぐ寝ちゃう。だから、私はメールを打つ。そして、オナニーをし続けるのよ」敦美は、幾分、真実を語っていた。
自分の言葉が謎を解いている事実だということさえ知らず、自分の感情がどのようなものなのかも判らずに、言葉を続けた。
「復讐だな。アンタ、亭主から復讐を掛けられているんだよ」
「飲んでるやせ薬って、絶対にシャブなの?」
「ああ間違いない。アンタはペットボトルを持って歩いていたね。あれは喉が異常に渇くからだろう。それに肌がガサガサしている」
「どうしよう、どうすればいいの」敦美が縋ってきた。僅かに、俺の中で憐憫が目覚めた。
つづく
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