上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
第131章
“森永俊祐”という男は広告業界に身を置いていたわけで、芸能関係との繋がりもヒットした。
驚くことに、今では、芸能人の巣窟と噂される、渋谷円山町に居を構えていた。
おれは、この情報は、上野に進呈してやろうと思った。意味もなく、彼に、無駄な時間を費やさせるのは、この際、賢明ではなかった。
このヒントがあれば、上野は、俺がもっと重要な情報を隠し持っていると思っても、素直に協力するモチベーションに繋がる筈なのだ。
やり手の記者であれば、“森永俊祐”の身分照会から、何人かの有力者の子息令嬢や、適当に売れている芸能人が浮かび上がるに違いなかった。
そうなれば、リストの中で検索すべき人間の目星もつくだろうから、芋ずる式に、関係者の掘り起こしが可能だった。
そのリストは、警察からの情報を吸い上げる場合にも有効だし、汚れたエリート集団の覚醒剤汚染疑惑を、三週連続で特集記事にすることも可能なはずだ。
上野の件は、これで良い。上野のことだから、情報源である俺の存在は重要なわけだから、逐一、彼が得た情報も開示してくるだろうから、労せずして、“片山ノート”の解明が出来る。
問題は、この一連の捜査状況を、寿美家族の方に、どのような形で知らせるかということだ。
当然のことだが、寿美を通じて、彼らに情報を流してやるわけだが、寿美家族にとって、欲しいものが、家族の身の安全なのか、覚せい剤の販売ルートの情報が欲しいのか、その辺が曖昧だった。
寿美に会う必要があった。
寝る前にメールで、敦美には、今夜は仕事で、そちらには行けないと伝えた。
敦美からも、了解の返信があった。
翌日の昼過ぎに、上野と、例のジャズバー静で合う約束をして、俺はベッドに横になった。
なかなか寝つけなかった。一瞬、まどろむのだが、また目が覚め、又まどろむ繰り返しだった。
そうこうしている内に、寿美にメールをするのを忘れていることに気づいた。
肝心の寿美を忘れるとはと思ったが、今回の“片山ノート”に関して、寿美の存在が、どの程度の位置づけになるのか考えてみると、それほど重要な地位に居るようには思えなかった。
しかし、まったく不要な存在でもない。彼女の家族が、血眼になって探していた“片山ノート”のデータを、実は俺が持っているのだから、彼女の家族にとっては、或る意味で、俺が最も狙うべきターゲット、そのものになっていた。
そんなことを考えながら、俺は寿美にメールを入れた。
数分もせずに、寿美からいつもの宿で、午後三時に、とメールが返ってきた。
いつのまにか、俺はまどろみから、本格的眠りに就いた。
夢を見ていた。寿美のヴァギナに陰茎を挿し込んだまま寝てしまい、寿美を酷く不機嫌にしてしまう夢だった。
つづく