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第130章
上野に、エクセルのデータを、そのまま渡す気はなかった。
備考欄の×、▽、○、◎の分類を削ったデータをプリントアウトして、紙データを渡すつもりだった。
無機質な静かな音を伴って、データは無事にプリントアウトされた。データ元のデスクトップアドレスなどがインプットされていないことを確認して、茶封筒に突っ込んだ。
これで、準備は整った。
後は、上野の腕を確認する作業を、じっと待つだけだった。
この紙データを、どのような方法で確認して、その中にある、需要な問題点を炙り出すかどうか、それは、上野の力量をたしかめる意味でも重要だった。
仮に、上野の能力に限界があるようであれば、次の人材を思いつけば良いわけだ。
しかし、あの浅井が見込んだ上野には、一定の能力があるから、あの週刊誌の記者でいられるわけなので、大いに期待しても問題はないと推測で来た。
さてどうするか、俺は考えていた。
パソコンの画面に浮きあがっているエクセルのデータを睨んでいても、なにも始まらなかった。
試しのつもりで、◎の印がついている人物名前を、目的意識もなく、googleで検索した。
5,6人叩いてみたが、人命占いのサイトか、地方の市会議員にヒットしたり、同窓会名簿にヒットするばかりで、興味深い検索には出遭わなかった。やはり、偽名が多いと云うことが確認できた。
携帯の番号の方が、有効性があるのは判っていたが、上野に紙データを渡すにしても、それが、どれほど重要なデータであるか、自分自身が確信を持っておきたかったのだが、そう簡単に思惑通りには、事は運ぶものではない。
それでも、執念深い俺の指は、次々とリスト上の名前を検索した。
100人近く打った時だった、与党の某有力議員の息子らしき人物が検索に引っかかった。
平成元年S大学経済学部卒。現在、D広告会社勤務。父親は与党**党の****氏。母は**株式会社の創業一族。趣味は、ゴルフ、サーフィン、スキーなどスポーツ全般。独身。
****氏といえば、与党の重鎮に数えられる人物だった。もし、この検索で出遭った人物と携帯番号に関連があれば、あきらかに、一大事である。
母方の企業にも重大な問題が起きるわけだし、父親共々、大事になるのは、確実だ。
週刊誌にとっては、大スクープになるのは確実な案件と言えた。これだけでも充分だったが、“森永俊祐”と云う人物を特定できないものか、様々な切り口で、検索をしてみた。
かなりの情報が、居ながらにして得られた。インターネットの機能に感心する以上に、ネットの危険性を感じながら、“森永俊祐”の情報を掻き集めた。
そして、かなりの可能性で、シャブに手を染める環境が、彼の周辺にあることを理解した。
おそらく“森永俊祐”は本名に違いない核心に近づいた。はじめから、本名を使ったわけではないだろうが、或る時点から、気心が知れる関係になった片山は、敢えて、彼の本名を書き込んだような気がした。
そのような罠のような書き込みは、意外に行われるもので、一種、犯罪者の免罪符になるのではという、下心から生まれることがあった。
つづく