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第128章
パソコンを開くと、Windows10の更新がはじまった。
なんでこんな時に更新をするんだと思ったが、始まってしまった以上、それが終わるのを待つしかなかった。
更新は嫌に長い感じだった。
シャワーを浴びようと部屋を出た時、携帯が鳴った。
寿美からだった。
“兄が任意の事情聴取で呼ばれたの”
「任意か、でも、そのまま逮捕って流れかもな……」
“私も、そんな感じがするの。どうしたら良いかな?”
「現時点では、手の打ちようはないよね。現実を直視するのが一番だよ。ただ、兄さんが警察に話した内容次第だけど、今度の“片山ノート”の件は、すそ野の広い問題に発展しそうなんだ。」
“それって、どういうこと?”
「いまの時点では、あまり具体的なことは判らないんだけどね、単に、警察は、片山が殺害された事件だけを追っているという感じじゃないんだよね。片山が殺されたことで、影響を受ける、何らかの問題が隠されているようなんだ……」
“隠れた問題って、どういうこと?”
「今の時点では、皆目見当がつかないんだけど、外事や公安も動いているようだからさ、殺人事件の捜査なんて、どうでも良いような動きがあると聞かされたよ」
“貴方の情報源って、警察なの?”
「いや、兄貴が新聞記者だからね、そのルートもあるし、昔は、これでもトップ屋だった経歴があるからさ、そのルートもあるからね」
“そうなんだ、意外な経歴があるのね”
「まぁ、小説も、簡単に売れるわけではないからさ、何かに、食い扶持を求めるわけだよ」
“そう、親の遺産かなんかで生きている人かと思っていたわ”
「まさか、俺、そんなに呑気そうに見えるのか」
“見えるわよ。どこかの金持ちのバカ息子風に見えるわ”
「そうか、それは知らなかった。案外、苦労人なんだけど、バカ息子に見えるのは嬉しいね。顔に苦労が滲み出ているなんて、恥ずかしいからね」
“それはそれとして、そうなると、私の家族たちって、どうなるのかしら?”
「予想しにくい事件だからね。捜査は多岐にわたるし、立件する要素も広がりを見せるだろうから、途中から、特捜部案件になってしまうかもしれないな」
“特捜部?あの東京地検特捜部ってこと?”
「そう」
“例えば、ロッキード事件みたいな?”
「まぁ、そこまで大きくはないけどね……」
寿美は、もっと電話をしていたいようだったが、仕事が立込んでいるとからと、話を切り上げた。現実、幾ら質問されても、それ以上の事実を、俺は掴んでいなかった。
無論、これから見る、“片山ノート”らしきもののデータの話をする気はなかった。
つづく