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第116章
危険の共有で興奮した二人は、隣室のカップルのことを忘れて、二度目の快感を味わい、身体を横たえていた。隣のカップルが、我々に刺激されて、営みを再開する様子はなかった。
「しかし、俺たちにとって不要なノートなわけだから、あったら、すぐにでも彼らにくれてやれば良い話なんだけどね」
「そうなのよ、そのノートさえ見つかれば、もう、彼らとの関係はなくなるわ」
「警察が家探ししたのだから、まず、君のマンションになかったのは確実だな。おそらく、会社の方も徹底的に調べたろうから、そこにもない……」
「そうなると、女のところと考えるのが一番よね」
「君は、その片山の愛人たちって、具体的に知っているわけ?」
「二人の女のことは知っているわ」
「愛人は、そのふたりだけなのかな?」
「三人はいるのよね。もう一人が誰なのか、私も知らないの」
「しかしさ、旦那は、そもそもは、君の財産狙いだったわけだろう。つまり、まだ君は、旦那に金を渡しているわけじゃないのだから、旦那は、どうして、そんなにまで金回りがいいのかな?」
「そんなこと、深くは考えていなかったわ。月々の生活費も貰っていたから、それ以上は、片山の財布のことなんて、考えなかったもの……」
「そうなんだろうけどね。冷静に考えたら、ずいぶん稼げる男になったものだと、感心しても良さそうだけど、まぁ敦美さんってのは、そういう人だからね」
俺は苦笑いをしながら、まだ下着をつけていない、敦美のお尻に手を回した。
「馬鹿って言うのかな、無関心っていうのか、他人にあまり興味が持てないの。興味があったのは、父親くらいのもので、あとの人の輪郭は、いつもぼやけていたわ」
「だからといって、君は、自分にも、それほど興味があるようには見えないんだけど、自分には興味があるの?」
「……どうなんだろう。これからどうしようとか、将来はどうなるのか、どうしたいとか、あまり考えないからね。その時々というか、精々これからの一年くらいは、どうなるのかな、そんな感じだよね……」
「まぁ、だとしても、君が思い出さない限り、ノートの所在をたしかめるす方法はなさそうだ。そして、その片山ノートは、ある一定の人間たちにとっては、殺人を犯しても入手したいものであったりする。ただ、我々にとっては、そんなノートは一文の価値すらない。きっと、麻薬の密売関係者にとって、何億もの価値がある、そういうことなんだろうな……」
「そうか、私たちにとって、二束三文の古ノートが、あの寿美さんの家族たちのような人たちからすると、何億円にもなるわけか……」
「まぁ、そのノートは、犯罪を犯す覚悟があれば、何億円もの価値がある、そういうことだね」
「そうか、少し真剣に思い出してみようかな。ふたりの愛人の身元は判っているんだから、確認する手はあるかも……」
「そうなのか、だったら思い出してみてよ。その片山ノートは我々にとって価値はないけど、それが見つからない間、我々には危険がつきまとう、そういう代物ってわけだからね。場合によっては、我々の安全の保証書になるノートだからね」
「頑張ってみるよ。まずは、ふたりの愛人から探ってみるよ。二人の関係から手繰っていけば、もう一人も、絞り込む自信あるんだよね」
つづく