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電話が鳴った あぶない女59


第59章

その時、電話が鳴った。

 俺と敦美のどちらの携帯が鳴ったのか判別つかなかった。俺の電話なら、出る気はさらさらないが、敦美の携帯が鳴ったのであれば、出ないわけにはいかなかった。

敦美の携帯だった。

やはり、殺された片山亮介は敦美の夫だった。

遺体確認は直ぐに終わったが、事情聴取に時間がかかっていた。敦美が家を出てOホテルに滞在している事情を厳しく質された。

夫婦仲が悪くなり、別れるつもりで家出をしたとまでは説明したが、なぜ、昨日家を出たのか、その理由を厳しく聞かれたようだった。

特に昨日である必要はなかったが、たまたまその日になったと敦美は主張したが、信じている様子はなかったとのことだった。

まだ事情聴取のようなものがあるらしいので、ホテルに何時に戻れるか判らないけど、居て欲しいと云うのが敦美の願いだった。

厄介な事件に巻き込まれそうだったが、敦美を放り出すわけにもいかない俺は、夜九時以降はホテルの部屋にいることを約束した。

そして、何かあったら、敦美の携帯を鳴らすように伝えた。

おそらく、調べが進めば、敦美のアリバイを証明するために、俺が引き摺りだされるのは必然だった。

それにしても、俺が敦美のアリバイを証明出来る時間は限定的だった。たしか、昨日の午後1時から6時まで、敦美がOホテルにいたことは証明できる。

しかし、その前後の時間、敦美がホテルの部屋に在室していたか証明はできなかった。

ポイントは、夫である片山亮介が、昨日の何時に殺されたかで、敦美の立場は劇的に変りそうだった。

しかし、仮に敦美のアリバイが証明できないからと言って、敦美を犯人とすることは、殆どないのではないのだろうか。

財産目当てであれば、逆に敦美が殺されているべきで、夫の片山亮介が殺されるのは逆転現象だった。

敢えて、敦美の犯行だと決めつけるには、夫婦げんかの末の犯行と云う構図だろうが、毒殺などの方法でない限り、女の犯行だと決定する要素は乏しいに違いなかった。

ということは、ねちっこく、根掘り葉掘りと事情は聞かれるだろうが、敦美を、そのまま拘留するような暴挙には出ないと考えられた。

檜の匂いが薄く感じられたが、気分の所為だと思った。果たして、このような状況で、寿美と身体を重ねて、充分な勃起が得られるか、幾分不安だった。

敦美が、夫の片山亮介を殺害する動機は、殆どなかった。

まあ、自分を覚醒剤漬けにしようとしたので腹を立てたと云う筋書きもないわけではないが、あまりに感情的過ぎた。

財産目当てと云う筋書きでも、片山亮介が敦美を殺したのであれば筋が通るが、逆さまはあまり捜査の対象にはなり難い。

仮に、片山亮介に多額の生命保険などが掛けられていたとしても、敦美の財産と比べれば、たいした額にはならない筈だった。

ただ、敦美が、俺にすべてを打ちあけていない可能性はあった。

夫が、シャブ漬けで財産を掠め取ろうとした行為に、激高していたことは考えられた。単に、俺には、そのような態度を見せなかっただけかもしれなかった。

つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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