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終着駅415


第415章

映子からメールが入った。“もう、電話とか出来ますか?大丈夫なようなら、少しお話したいのですけど”

私は、問題ないとメールを打った。

『ヨカッタですね、すべて思い通りで。おめでとうございます』

『ありがとうございます。思いのほか、安産だったみたいよ』

『本当に良かったわ。社長も手放しで歓んでいましたよ。ところで、ご報告なのですけど、今日人事が発表されたんですけど、涼さんが秘書室の室長代理に異動になりました。社長が言うには、既に、滝沢君には話してあるからってことなのですけど、本当に聞いていらしたのかと思って……』

『そうね、出産前に顔を出した時、そんな流れのお話を口になさったかもしれないけど、具体的な時期やポジションまでは……』私は、鮮明に記憶していたが、社長のニアンスに合わせて答えた。

『やっぱりね。あの人って、最近、凄く気が短くなっちゃって、今にも、命が絶えるような勢いで、あれこれと、手を出しはじめたのよ。なんだか、チョッと心配になってきちゃって……』

『どこか悪いところでもあるの?』

『私の知る範囲ではないわ。血圧の薬とか、サプリみたいなものは飲んでいるけど、特に持病とかの話は聞いてないの……』

『ずばり聞いてみたら?』

『なんでもズバズバ質問できるんだけど、何かね、重大な宣言でもされたらどうしようって思うから、聞くに聞けないのよ……』

『末期の癌だとか言い出しそうで?』

『そうそう、そう云うこと。出来たら、そう云うことは、現状では聞きたくないかなって……』

私は、社長の腹が幾分読めていた。竹村の遺産を相続したことで、会社の株を二分することになった私の処遇を考慮した動きだと云う事が理解できていた。

ただ、現時点で、そのことを映子に対して、あらためて持ちだす必要もないと判断した。

ただ、たしかに、私が出産で入院している最中に、異動させるほど緊急を要することでもないのに、その点で、社長の気が短くなっているのは事実かもしれなかった。

しかし、気が短くなり、居てもたってもいられなく現象は、ある年齢に達した人に起きがちな症状で、特別病気云々とは関係ないと思った。

『まさか、この間お会いした時も、そんな感じはなかったわ。血色も良かったし、声のトーンも変わりなかったし、それに、社長の不調とか、映子さんが一番手に取るように判っている筈じゃないの?』

『うん、まあ、その辺は大丈夫なんだけど……』

『だったら、きっと映子さんの思い過ごしだと思うけどね。そうだ、それに、社長でしょう、病院の院長に、竹村と云う患者のこと、ひとつ宜しくって電話してきたのは』

『あぁ、やっぱりしたわけね。私は、変に上から圧力なんて掛けない方が良いんじゃないのって話したんだけど、結局、電話したわけね』

『いえ、社長だと具体的に判ったわけじゃないのよ。ただ、産科の担当医の先生から、院長からも、竹村さんの件は万全を尽くしてくれよって、お声が掛かったって聞かされたので、誰が院長に電話するかなって推理した結果、社長の顔が浮かんだだけなの……』

『そう云うことなんだ。多分、間違いなく、涼さんの推理は当たっているわ。それにね、私、時々焼きもち感じるくらい、あの人、滝沢涼さんの存在を意識しているのよね。あれって、どう云うことか、推理できないかしら?』

『まさか~っ。だって、社長と上手くいっているんでしょう?』

『まあまあね』

『だったら、何でもない話よ。ただね、竹村の遺産相続で、私が、我が社の大株主になった話は知っているよね?』

『漠然とだけど、知っているけどね……』

『多分、そのことで、将来的に、私が、会社の主たるポジションに就ける器量かどうか、考えだした所為じゃないのかな?』

『それだけかな?』

『それだけだよ。あんまり、近くで見ているから、逆に見えにくいんじゃないのかな?』

『そうかな。なんだか、少し癪だけど、涼さんと競争も出来ないしね。ふふふ。そうそう、お祝いの話なんだけど、明日でも病院の方に面会に行っても差し支えないのかしら?』

面会時間を映子に伝え、電話を終えた。

たしかに、社長の動きは性急だった。何も、そこまで慌てる問題ではない筈なのに、私の存在を意識し過ぎた人事に着手しているようにも思えた。
つづく

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鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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