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終着駅374


第374章

翌日、産科の検査で病院中を回らされたが、運動不足かなと思っていたところなので、特に不満はなかった。

午後三時には、検査のすべてが終了した。検査入院は今日で終わりだから、速攻で荷物をまとめて帰る準備をしているところに、櫻井先生が顔を見せた。

「明日にならないと、最終的検査結果は判りませんが、まず間違いなく実行できると思いますよ。実行の日取りの問題もありますので、週に一回、出来れば診察に訪れていただきたいところなんですが、それは厳しいでしょうから、週一のペースで、僕に電話をしていただけますか。その時々の状況を把握しておきたいわけです。出来たら、体温と血圧をご自分で測っておいて貰えると助かるんですけど……」

私は、櫻井先生が、自分の研究に役立つ治験と云うことだけではない、親身さに、思わず聞いてしまった。

「櫻井先生って、患者さんには、いつもこんなに親切なのですか?」

かなり、無礼な質問だったが、凄く気になる部分だったので、今後のことも踏まえて、質問をぶつけた。

「あぁ、それはですね。たしかに、変に親切に感じるかもしれませんね。
実は、僕のところにも、村井先生のところにも、院長から直々、竹村さんの件には、全力を上げ、且つ親身になって対応するようにってお達しがあったんですよ。
それがキッカケなんですけどね、村井先生も僕も、世代が近いせいか、知らない内に親近感を持ちだしていた面もあると思います。院長のお達しだけじゃないと云うことです。
ただ、キッカケは、そう云うことです。それに、村井先生の場合、お父上の患者さんだったわけですから、余計に張り切りますよ。
まあ、僕の場合は、自分の研究ににおいても、レアに挑戦できるチャンスでもあるわけです。ですから、竹村さんが恐縮する必要はないわけです。以上、親身になる理由です!」

櫻井先生は半分、小学生が教師に答えるように、直立で、その辺の事情を簡潔に話した。

私は、そんな櫻井先生の態度がユーモラス過ぎたので、ついつい笑いを堪えきれず、笑いながら、次の質問を繰り出した。

「院長先生が、どうして私のこと知っていたのでしょうか?」

「いや、そこまでは知りません。まさか、院長に、どうしてですか?って聞くわけには行きませんから……」

「私が、院長に直接聞かないと、判らないんですね?」

「まあ、そうなりますけど、まさか、竹村さん、院長に聞きに行く積りじゃないですよね?」

櫻井先生は心配そうに尋ねてきた。

「大丈夫ですよ。忖度の精神はありますから」私は、そう答えて、安心しなさいと云う目で肯いた。

櫻井先生の顔が紅潮していた。驚くほど可愛い安堵の笑顔だった。

この先生、いや、この男が、私の出産を担当するのか。この男の手が、私の中に入ってくるのだろうか。

直に対面している男に、近々、私のすべてが見られてしまう。一般的には思いもしない感情に襲われ、いくぶん性的ニオイが漂った。無論、櫻井先生までニオイが届くことはなかった。

私は、取りあえず退院した。

次の本格的入院まで、1カ月弱あるはずだった。この期間を、どのように過ごすべきか考えた。

一カ月間だけ仕事に復帰しても、いかにも中途半端だった。かといって、神楽坂のマンションで、お腹を撫でながら過ごすと云うのも楽しそうではない。

私は久しぶりで、ファミレスSで“バローロ”のボトルワインを堪能していた。そして、今まで、無為に過ごす1か月近い時間を持った事があったかどうか、遠く思い起こした。

記憶にある範囲では、未経験な無為な時間だった。無為な時間が無駄かどうかも、経験していないのだから判らない。

妊娠の事実がなければ、お洒落に行き当たりばったりの国内旅行も良いのだろう。しかし、最悪タクシーで帰れる範囲の旅行に限定されそうだから、旅と云える程の事も出来ない。

読みたかったけど、大作過ぎてページを捲ったこともない本を読むのも悪くはないのだけど、無為に過ごしていることにはならない。普段生活している以上に頭を使うことになる。

観たけれど、もう一度観たい映画。題名は知っているけど、見損なった映画を片っ端から観賞する。この計画は、少しだけ魅力的だった。

DVDなら中座しても、続きが観られるし、出産と病気で失われる時間を出来る限りケアしておく事柄に一定の見通しを立てておく行動も可能だった。
つづく

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鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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