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終着駅375


第375章

そうだ、お義父さんに、その後の高坂尚子に関する情報を確認しなければ。

その情報によっては、当面、彼女のことで、生活を乱される怖れはなくなるのだから、一時的な封印が可能だった。

無論、尚子のような人が、罰を受けたからといって、すべてを水に流して、悔い改めるなどと云うことは断じてない。こちら側がすっかり忘れた頃に、牙をむくことは、想定しておく必要があった。

しかし、一時的にでも、安全という事実は有りがたかった。

『そうでしたか、それはご心配ですね。でも、最近は完治する病気のようですから、万全の治療を受けられれば大丈夫ですよ』お義父さんは、一瞬言葉を探していたが、いつもの如才のない言葉を口にした。

『ありがとうございます。私も、そのつもりで、前向きに治療を受けようと思っています。仕事の方も半年の休職にして貰えたので、心置きなく治療に専念出来ます。お義父さんにまでご心配いただいて、申し訳ない思っています』

『なにを他人行儀な。私たちには不幸が重なりましたけど、いわば家族のようなもんですよ、共通の敵もいますからね、ちょっとした同士ですよ、ハハハ。そうそう、その後の話をしていませんでしたね・・・・・・』

そんな挨拶の後、お義父さんから、延々と高坂尚子の件について話を聞かされた。

運よく、携帯の電池切れの音が、お義父さん側にも聞こえたらしく、”いやぁ、長々と話してしまいまいました”と云う挨拶で電話は切れた。

私は、お義父さんから、高坂尚子の裏の顔を聞かされて、心臓が飛び出しそうだった。今でも、その動揺は続いていた。

高坂尚子は三十一歳の時、当時、関東で銀座を中心に勢力を維持していた暴力団組織T会の幹部だった男と結婚していた。そして、尚貴が生まれた。

その事実だけで、充分に驚くわけだが、その男と結婚した後も、竹村の家のお手伝いさんは継続していたようだ。現実的に考えれば、身重でお手伝いという仕事が出来るとは思えない。

増して、産後の時期や育児の期間も、竹村家でお手伝いを継続していたと云うことは、考えにくかった。

その辺の経緯は謎らしいが、竹村がそのような事実をまったく知らなかったと云うのは、変だった。

おそらく、竹村は、その事情は知っていた可能性の方が高い。何らかの弱みでもない限り、尚子に対しての竹村家の対応は奇怪過ぎた。

どんな弱みがあったのだろうか?高坂尚子が、ホスピスまで押しかけて、竹村を罵倒した一件は知っていたが、その事件は、すべて尚子の妄想にかられた上の出来事と考えていたが、違うのかもしれない。

もしかすると、高坂尚子の言い分に、真実が含まれていた可能性はありそうだった。

しかし、竹村家の人間がこの世からいなくなった今となっては、知りようもなかった。

仮に、方法があるとしても、それを知ることで、私の立場がどうなると云うものではない。好奇心はあるけれど、竹村の家の恥を暴くようなものだった。

竹村のお父さんと尚子の間に、ただならぬ関係があったことは想像できたが、すべて過去のことだった。

そして、竹村自身には関係ないことでもあった。尚子と云う人は、一つの怨念を継続的に、間接的な人間にまで波及させる厄介な性格の持ち主なのだ。

怨念のスリークッションでもあるまし、父から息子に、そしてその嫁にと、同一の怨念を相続させようとしていた。

高坂尚子の怨念の件は、やはり彼女が狂っている事を証明していた。相手は狂人なのだから、今まで同様の注意深さも必要だった。

それよりも、暴力団幹部の嫁となり、尚貴をもうけたにもかかわらず、お手伝いと云う仕事を続けていた。それだけでも充分に不可思議だったが、暴力団幹部だった夫の死後、その暴力団とのつき合いを断絶していない点も不思議だった。

今回、高坂尚子が逮捕された覚せい剤の保持は、その製造又は密輸販売にまで捜査範囲が拡大しているのも、夫だった男の仕事に一枚噛んでいたことで派生的に起きた事件のようだ。

高坂尚子は、竹村家のお手伝いさんと云う誠実そうに見える表の顔と、覚せい剤の密輸販売では、重要なルートを司る人物と云う裏の顔を持っていたことになる。

こうなると、尚貴の裏動画の製造販売も、尚子の関与が確実視された。そのような稼ぎがあったからこそ、三鷹のそれなりの場所に、一棟のマンション所有者になれたのだろう。

いままで、老年に達しつつある女の妄執に過ぎないと、軽い判断に傾いていたわけだが、高坂尚子の執拗さには裏がある。

そう思うべきだと思った。しかし、私のどこが狙われているのか、狙いは何なのか、それが判らないのだから、警戒するにも限界があった。
つづく

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鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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