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第140章
敦美の、片山ノート探しは続いていた。
もう必要はないと言ってしまいたい誘惑にかられたが、飲みこんだ。
「まだ、片山さんの愛人探しをしているの?」
「全然わからないのよ」
「当の本人が死んでいるんだから、調べるのも限界あるしね。尾行と云う手段を除いて、旦那の愛人探しは、簡単じゃないからな」
「そうなのよ、こんなことになるなら、生きている間に突き留めておくべきだったわ」
「ところで、敦美は、どうして第三の愛人を探しているんだっけ?」
「片山ノートを見つけたいからだけど……」
「いやさ、どうして片山ノートを見つけなければならないんだったっけ?」
「だって、また、アイツらが、探し回っているかと思うと、気が気じゃなくてさ……」
「あれから、彼らから何か言ってきたの?」
「何もないけど、なんだか、必ず言ってきそうなんだもの……」
「そうか、それがないとは言えないけど、あれから半年近く経っているだろう。それに、アソコの誰かが、警察に呼ばれたって言ってたよね、もう動くのやめたんじゃないのかな?」
「甘いはよ。彼らは、あの商売で生きてきたのだから、販売ルートのアイツのノートは、絶対に欲しい筈だもの」
「まぁそうだけど、そんなに欲しいなら、自分達で探せばいいわけで、敦美を脅しても、知らないものは知らないんだからさ」
「そういう理屈が通じる相手なら心配しないよ。そういう相手じゃないから嫌なのよ。また、なにか仕掛けてくるんじゃないかと思うとね」
「たしかに、気分はよくないけど、彼らが危害を加える可能性はないんでしょう?」
「今までならそうだけど、切羽詰まれば、強行に出てくるかもしれない人間たちだから……」
「そうか、気味が悪いか……」
「住むところは、二回移動したから、簡単に住まいを見つけられる可能性は減ったけど、ついつい、新宿には出てしまうから……」
「池袋に出るか、渋谷に出てみたら?」
「それも何だか面倒だしね」
「やはり、新宿がいいか」
「そうね、出来るだけ出ないようにはするけどさ」
「そういえば、寿美さんには、第三の愛人の話したんだよね。その後、彼女と話はしたの?」
「ううん、あれから連絡は取っていないわ」
「そうか、ダメもとで、連絡とってみるのも手だよね。敦美が、いまだに第三の愛人探しで動いているってことを知らせておけば、敦美を揺さぶっても意味がないことが、相手に通じると思うんだけどさ」
俺は、投函した郵便物は、既に彼らに届いているに違いないと、カレンダーに目をやった。
つづく