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終着駅376


第376章

結局、お義父さんから得た情報は、高坂尚子への警戒心を強めることには役立った。しかし、尚子の私への嫌がらせは、覚せい剤であるとか、裏動画のような裏の職業と関係しているとは思えなかった。

高坂尚子の情報が増えたのは事実だが、尚子が私に向かって起こしているストーカー的な行動の原因が判ったわけではない。

逆に、尚子には、暴力に訴える可能性があることを暗示しているだけで、逆恨みの質が、より悪質性を帯びていると云うことを知らせるだけだった。

お義父さんの情報は、私にとって役立たずだったとも言える。

無論、お義父さんに罪はないわけで、文句も言えない。私は、力なく首を振り、何なんだこれは、と思ったが、出てくるのはため息だけだった。

この情報を有紀に話しても、混乱に拍車が掛かるだけで、ことが良い方向に向かうとも思えなかった。黙っていた方が得策だった。

しかし、金子弁護士には、情報を流しておく必要があった。

謂れのない意味不明な内容証明郵便を送りつけてきたことへの対応も、彼に任せていた。それに、出来ることなら、私が入院加療中に、吉祥寺の家を消し去っておいて貰いたい気持ちもあった。

なんら根拠はないのだが、あの竹村の家が呪われているように感じてしまったのだから、跡形もなく消して貰うのが一番だった。

しかし、と思った。

いま、私が、根拠もなく、吉祥寺のあの家が悪いと思ったと云う心模様は、高坂尚子の逆恨みに一脈通じていることに気づいた。

そうか。人間って、根拠もなく、相手に罪がないのは判っていても、その相手を怨むことで気が晴れる。そういうことを、私自身が実践していた。

単に、私の場合は、逆恨みしたのが家であり、尚子は人間である私に向かった。ただそれだけの違いなのかと、愕然としてしまった。

私は金子弁護士の携帯を鳴らした。金子は、まだ事務所にいるので、こちらから折り返し電話をすると云うことだった。

バスタブを簡単に洗って、お湯を張る準備を終わらせたときに、金子から電話が入った。

私は、かい摘んで話したつもりだったが、十五分近く、一人で一方的に話した。金子は、時々、なるほどとか、ほう!とか相槌を打っていた。

そして、私が一通りの説明を終わらせると、話し出した。

『推測ですが、お話を聞く限り、竹村氏のお父さんと高坂尚子の間に、何かがあったのでしょうね。それを竹村氏も知っていたが、誰にも話さなかった。ただ、その男女関係のようなものですが、当時、竹村さんの家にはお母さんも居たわけですから、高坂尚子の側が、一方的に有利なわけではないわけです。刑法に触れている状況でもないでしょうから、単なる不倫に過ぎません。当然、男の側が何らかの金銭的代償を支払った。或いは支払い続けたとしても、私的な約束事と云うことです』

『つまり、不倫とかによる損害賠償のようなものですね』

『まあ、そのようになったのでしょうね。ただ、その賠償が、お手伝いさんとして、高坂尚子を雇い続けると云う約束だったかもしれません。あまり法的拘束力があるとは思えませんが、ただ、その息子の竹村氏も、お父さんと高坂尚子との約束を守った。ただそれだけですよ。破棄しようと思えば、いつでも破棄できたでしょう。ただ、そうはしなかった……』

『それで、残された命のことを考えて、思い切って、彼女を解雇した……』

『まあ、もう充分だと云う判断もあったと思いますよ。これで腐れ縁も区切りがつくとね』

『ただ、それでは大いに不満があった……』

『そのように思うのは、彼女の考えは勝手ですけど、その後の一連の行動は、場合によれば刑事問題です。ですから、竹村さんのお父さんの弱みが、どのようなものであっても、奥さんにまでトバッチリが飛んでくる事を容認は出来ませんよ。ですから、我々は、彼女の心模様の歴史的経緯と無関係な立場だと云うことです』

『考えても、意味がない?』

「意味がないとは言いませんけど、考える必要はゼロですよ。現に、我々は事実を何ひとつ知らないのですからね」

『そうですよね。私には関係のない話だと思って良いわけですね?』

『ええ、そうです。ただ、高坂尚子の逮捕された犯罪の内容と、亡くなった夫が暴力団の幹部だったと云う件は、注意の度合いを上げました。ただ、その情報によると、逮捕された罪状はかなりのものです。最低でも5年、場合によれば10年以上の懲役が科せられるはずです。ですから、高坂尚子が刑務所から指示でも出さない限り、何かを実行することは無理です。現実に、何らかの支持を出すにしても、嫌がらせの支持につき合うヤクザはいませんよ。たいした金になるわけでもありませんからね』

『執行猶予がつくなんてことはありませんか?』

『ありませんね。お話によれば、覚せい剤を使用したと云うレベルではなく、輸入して販売していたわけですから。麻薬特例法違反(業としての譲渡)か覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪ですから、執行猶予はあり得ません。初犯であっても、営利目的を業としていたでしょうから。しかも組織的にね。その組織が、暴力団絡みとなれば、一層、重くなるでしょう』

そこで、高坂尚子の件は取りあえず終わった。

これから、無謀とも思える出産を控え、その上、白血病治療を受けようとしているのだから、5年、10年先まで、高坂尚子は刑務所の中、それで充分だった。
つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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