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第137章
考えれば考えるほど、厄介な代物だった。
寿美の家族に、データを渡すのは問題ない。
彼らは、覚せい剤の販路を求めているだけで、それ以上余計な思惑が入り込む余裕はないだろう。そして、事件を大きくしてくれる可能性があるのだから、上客云々のマーキングは削除したものを渡せば済むことだった。
そうか、一日もあれば、片山のベアなデータの備考欄にある、×、▽、○、◎の中から、○と◎の人物だけソートして、そいつらを、片っ端から検索して人物像を特定させることだ。
○、◎のマーキングがある人間の数は、150人程度だった。これらの人物のプロフィールを作っておけば、このデータが表面化することで、政財界にどのような変化が起きるか、ある程度の想像はつく。
俺は、久々パソコンと格闘していた。
80人近くの個人プロファイルが手元にあった。この80人は政界財界のトップレベルに君臨する人物の息子や娘で、一人当り1億円ずつ恐喝しても80億円になるような代物だった。
現実には、恐喝に乗らない人物たちもいるだろうが、半分としても40億円になるデータだった。
いや、ひとり頭、1億は多すぎる。自分の子息の犯罪に1億を出す人物は限定的だ。おそらく、人物の立ち位置で、その恐喝額は変動するに違いない。まぁ、そのあたりはゆっくり考えれば良いことだし、場合によれば、中止してもいい話だった。
しかし、寿美の家族たちが、俺がいま気づいた恐喝の道を思いつかない保証はなかった。
覚醒剤販売で、ある程度の稼ぎは生むとしても、ひとりあたり1億円の恐喝の方が断然割の良いことに気づくのは時間の問題のようにも思えてきた。
考えは、甘かったようだ。
寿美家族に渡してやるデータは、×、▽、○、◎のマーキングを外すだけでは駄目で、○、◎の人物たちを消去したデータでなければ駄目なのだと気づいた。
なんとか、渡す前に気づいてよかった。
渡してしまってから、返してくれは、話が複雑になるし、寿美の家族と顔を合わせるような事態まで招きそうだった。
そうか、検索でヒットしなかった○、◎の人物は、官界、法曹界、学界の関係者の子息と云う可能性があることに気づいた。
こうやって、俺が考えるように、上野が考えないとは限らないのだ。
週刊誌の一記者であるよりも、○、◎の中の10人から1億円ずつ脅し取って、口を拭えば、もう週刊誌の記者など、する必要はなくなるのだ。
さすがに兄までが、恐喝に手を染めるとは思えないが、上野であれば、ないとは言えなかった。少なくとも、俺でさえ思いついたのだから。
つづく