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第118章
まだ、敦美の携帯は話し中だった。
「くそー」俺は、携帯をシートに投げだして、走りだした。
20分ほど走って、もう一度携帯を鳴らしたが、まだ話し中だった。
敦美の携帯にキャッチホーンを機能させる必要があると思ったが、今の今には役に立たない話だった。
家に着いてしまった。
もう一度だけの気分で、携帯を鳴らした。
ノホホンとした敦美の声が返ってきた。
「ずいぶん長い話中だったぞ」
“友達の中に、片山の第三の女の存在を知っているかどうか、訊ねていたの”
「それは、今夜はやめておいてくれ。詳しいことは、明日話すから、それまでは“片山ノート”探しはやめておいてくれ」
“どうして?“
「どうでもこうでも構わないけど、休止だよ。下手すると、君が殺される可能性があることに気づいたンだよ」俺は大切な顧客に対して乱暴に話した。
“どういう風に?“
「だから、明日説明するから、それまで、もう、電話も、それ以外の行動もしてはいけない。そういうことだよ」
“わかった……”敦美は不満そうだったが、俺の剣幕に、“片山ノート”探しの休止を受け入れた。
先ずは止まった。
しかし、不承不承納得した訳だから、早々に、その理由を説明しなければならなかった。
話の成り行きから、寿美も登場させざるを得ないかもしれなかった。
寿美と俺の関係を知った敦美はどう出るのだろう。
寿美は、敦美と俺の関係を知っている。そして、その関係を容認したうえでつき合っているのだが、寿美と俺の関係を知らない敦美が、どのような態度に出るかは未知数だった。
敦美に、寿美との関係を知られずに、物事を進めていくのがベストだが、敦美の行動を制御するには、説得力のある話が必要だった。
少なくとも、“片山ノート”を、敦美が直接探そうとする行為は、思いとどまらせる必要があった。
それでは、誰が“片山ノート”を探すのか、敦美は、そのように聞いてくるに違いなかった。
そう、俺は、その説得力ある手段を、敦美に提供しなければならないのだ。
片山のノートを探すことを、敦美も俺も諦めるべきだった。なぜなら、“片山ノート”を我々が手に入れたからといって、その利用方法がわからなかった。
仮に有効な利用方法が判っていても、それを利用することは、犯罪に直接結びつくことで、話にもならないのだ。
つづく