第102章「そういえば、その後、片山事件と、貴女の家族の関係はどうなったの」
「今や、わが家族から、何人の逮捕者が出るのか、崩壊に近い打撃を受けると覚悟しているわ」
「そうなに関わっていたわけか……」
「相当にね。あの男の指示で、我が家は裏稼業していたわけだから、片山の犯罪が判ってしまえば、あとは芋づる式になるってわけよね」
「しかし、ボスの片山が殺されたからといって、必ず、寿美さん家族に、累が及ぶってのも考え過ぎじゃないのかな」
「まぁそうかもしれないけどね。我が家の家族は、片山の末端で生きていたらしいけど……。片山の方は、それが悪事の一部だったかもしれないから、とばっちりの波は、凄く大きいかもしれないから」
「つまり、もっと重大な犯罪が問題なわけなら、君の家族への影響はないってこともあり得るわけだよね」
「そういう希望的考えもあるけど、最悪な方を考えておくべきでしょう」
「まぁそうだね。でも、寿美さんの焼肉屋さんは無関係なわけだよね」
「えぇ、その点は大丈夫」
「お父さんも、大丈夫なんだろう」
「どうかな。多分、ここ数年は、関わっていないと思うけど、始めたのは父だったはずよ。まぁ兄さんたちが、自分達が、片山の指示でって言い張れば、軽微な罪で一件落着だと思うんだけどね……」
「だったら、頑張るように説得した方が良いんじゃないの」
「うん、取りあえず、やってはいるけどね、彼らは刑務所に入ることなんて、考えてもいないみたい。私の気持ちは複雑ね。正直、いっそ、わが家族は総ざらいして貰った方が良いのかも、そんな気持ちにもなるのよね」
「そうなのか……、まぁ覚醒剤の密売に関わっていたのは事実のようだからね、見過ごすと云う観測はあり得ないだろうな」
「家族一人一人は、それなりに愛してはいるわよ。でも、まとまった家族の塊りには、複雑な気持ちがあるからね、だから厄介なの……」
「それぞれに対しては愛情もあるけど、塊としては、迷惑なことも多いって感じかな」
「そうなのよね。彼らのいない生活なんて、一度も経験していないけど、何だか、凄く清々するんじゃないのか、とかね」
「それこそ、一時だけど、リセットが出来るかも」
「そう、血縁から逃れられるかもってね」
「血縁から逃れるか……」
「龍彦さんみたいな日本人には判らない問題だけどね」
「判らないってことはないよ。充分に想像できる範囲だよ」
「判るかしら?相当の圧力で私たちは生きてきたんだから……」
寿美家族が、北朝鮮国籍であることは知っていたので、彼らが、日本と云う国で生きていく上での障害は、想像以上のものだろうから、その血縁から遠ざかりたい寿美の心情は理解できた。
しかし、その阻害から身を守るようにして生きてきた家族を失うことも、抱えている厄介さ同様の厄介さが伴うような気がした。
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