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寿美と敦美が同級生だった あぶない女86


第86章   

タクシーが議事堂を過ぎたあたりで携帯が鳴った。漸く、敦美が連絡をよこしたと思ったが、敦美ではなかった。

寿美だった。

“いま、話しても大丈夫?”

「タクシーの中だけど、大丈夫だよ」

“実はね、片山亮介の事件なんだけど、我が家にも関係ありそうなのよ。それで、片山の奥さんのことが心配になって、電話しているのだけど、全然通じないのよ”

「えっ、片山って殺された人の奥さん、その人を知っているの、寿美さんは?」

“そうなの。敦美さんっていうんだけど、私、同級生なのよ”

「そう、結構仲が良いわけ?」

参った。寿美と敦美が同級生だったとは、運命の悪戯でしかないと思ったが、おくびにも出すわけにはいかなかった。

“いや、まあその辺は複雑だけど、仲の良い時期の方が多かったかな”

「で、なんで、その人に電話を入れたわけ?」

“父親と兄さんの動きが変なのよ。それで、敦美のことが、一応心配になってね。恋敵だったけど、やはり、仲良かったからさ”

「つまり、寿美さんは、その片山氏の奥さん、敦美さんの身に何か起きるような予感があると云うわけか……」

“そうね、まさかとは思うんだけど、なんだか気になり出してね……」

寿美に、なぜそのような心配をするのか、原因を深く聞きたかったが、電話で聞きだすのは、運転手の手前も考えて押し黙った。

「その奥さんの親御さんとか、親戚とか、友達とかに連絡してみたら」

“敦美の両親は、もういないのよ。親戚なんて知らないし、友達に確認するには、時間が遅すぎるしね。で、誰かと話したくなって、貴方に電話したわけ……”

「そうか、それにしても、もうこの時間じゃ確認するといってもね。すべては、明日になってからじゃないのかな。警察の事情聴取とか、旅に出たとか、交通事故に遭ったとか、色々考えられるからね……」

“そうよね。でも事情聴取って、まさか夜中まではしないでしょう?”

「あぁ、警察関連は夜中はないよね。ただ、その奥さんが、重要参考人になっていた場合は、当分携帯が繋がることはないだろうね」

“敦美さんが、片山を殺したってこと?それは、たぶん絶対にないと思うの。片山が殺された理由は、もっと違うことなのは確実なのよ。あまり詳しくは言えないけどね……”

「そうなんだ。まぁ俺が聞かない方が良いこともあるだろうから、それは構わないけど、そうなると、その敦美さんって奥さんが電話に出たくない事情があるということかな。もしかすると、誰かに監禁されているとか、そういうことも考えられるよね」

“そうなの。私が一番心配しているのは、敦美、事件絡みで監禁されているんじゃないかって思うのよ”

「そうなのか……」

俺は押し黙るしかなかった。不用意に話し出すと、俺が、敦美の現在の男であることが露見しそうで不安だった。

まもなく家につくので、電話は明日あらためてということで、寿美からの電話から解放された。

つづく


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鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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