第77章俺はオスともメスとも判別不能なオーガズムを味わい果て、腰の髄からの快感に翻弄された身体を横たえた。そして、敦美のなすがままに、股間の処理を任せ記憶を失っていった。
気がついたのは、珈琲の香りに誘われて、鼻孔が擽られた時だった。
「ハムサンドと珈琲が届いたわ、食べるでしょう?」
敦美が、こういうことに気がつく女だとは思っていなかったので、少し面食らったが、珈琲に異論を挟む気持ちはなかった。
「でも、なにも私が家出したその日に、アイツも殺される必要なんてあったのかしら、死んでまで嫌がらせしているみたい……」
敦美の日本語が変だと思ったが、敢えて指摘することはしなかった。
「単なる偶然だろうけど……、否、或いは、君がいないので起きた事件かもしれないけどね……」
「どういう意味?」
「いや、仮の話だけど、俺のような男だと、今夜は女房がいないから、何だったら部屋に来たら等と言っているかもしれないからね……」
「そうか……、でもあり得ないわよ。私、家出するなんて意志表示してないもの、いつ帰ってくるか分らないのに、おんな、呼ぶ?」
「なるほど、そりゃ危なくて呼べないな」俺はつい苦笑いを浮かべた。
「やはり、誰かが侵入して、アイツを殺したんだと思うな」
「彼の仕事は、人から恨まれるような仕事だったの?」
「どうだろう。私、アイツの仕事の内容、あまり知らないの。ただ、東南アジア中心の貿易の仕事だくらいしかね……」
「まぁ、普通そうだよな。そんなに詳しく、亭主の仕事内容知っている女房族がいるとも思えないからね」
「職場結婚でもない限りね」
「そう。しかし、よりによって見知らぬ第三者が、君のいない時に、君の家に侵入したと云うのも偶然過ぎるかな?」
「偶然ってこともあるでしょう?」
「まあ、ないこともないけど、君が留守だと判って起きた可能性が高いと思うけどね……」
「でも、夜中に誰かを呼びつけたとか、来たとか、そういうことは、一度もなかったわよ。あの日に限って、誰かが来たって、ありえないわ」
「だったら、彼が、誰かを呼びつけた可能性が高いよね。一般的に、夜中に呼びつけるとすれば、異性ってのが相場だけどね。ところで、どうやって、殺されたんだっけ?」
「毒殺らしいわ」
「そうか、毒殺なのか……。だったら、女の可能性が高いんじゃないのかな?」
「男だって、毒殺するでしょう?」
「まあ、それはそうだけど、毒殺なら、犯人が女の方がしっくりくるよね」
「刑事ドラマの見過ぎじゃないの?」
「まあ、そうとも言えるけど……」
二人は事件解明を目指すわけでもなく、戯れのように、事件の状況を根拠に寝物語をしながら、深い眠りについた。
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