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あぶない女 25


第25章

「今起きている勃起は、俺の意志に関係なく起きているから、貴女が手で弄んでいる物体は、俺の肉体から離脱している。だから、今の俺のペニスには意志がない。俺とは無関係な一物、そういうことになるんだと思うな」

「あら、このご立派なものは、貴方のものじゃないのね?」

「あぁ、幽体離脱の遺失物だね」

「交番に届けておかないと……」

「交番についた頃には、跡形もなく溶けているかもしれないけどね」

「そう、じゃあ届けるのはやめて、拾得物として愉しむわ」

一瞬、遺失物は拾得物に変り、手を離したシャネル女は、突然立ち上がった。

なんだ、もう幽体離脱ごっこはオシマイかと、気が抜けた。

しかし、それは誤解だった。

女は、湯船の外から、幽体離脱ごっこに参加する態勢をとった。

心持ち落胆してしまった俺の幽体離脱な拾得物は、現金な態度で、息を吹き返した。

女は、酷く丁寧に、愛しさを籠めて、その拾得物を扱った。

貴重品として扱う指使いが、かえって幽体離脱した拾得物の気持ちを鼓舞しているようだった。

俺は、シャネル女の表情を見たかったが、目を開けると、当然のように、女と視線がぶつかることを想像した。

女の表情がどんなものか、その興味よりも、俺が、どんな表情に見られるか、そのことの方が重大だった。

そう、俺は、自分がいま、どのような状況にいるのか、それ自体に戸惑っていた。

つまり、自分の気持ちを見失っていたので、作るべき表情が定まっていなかった。

おそらく、そう云う男の表情は、きっと間抜けなものに違いないのだった。

女の指は、執拗に“雁部”を柔らかく嬲っていた。

酷く、繊細なタッチなので、神経を集中していないと、風が通り過ぎるような感触だった。

しかし、極度に張りつめた亀頭部は、その繊細なタッチを、僅かな漏れもなく受けとめようと、さらに、血液の流入を促進した。

神経を集中することで、勃起中枢にだけ作用する脳内麻薬が放出されている姿を想像した。

ハッキリした姿が浮かんだわけではないが、どこか善人な顔つきの働き者が、注入ポンプのレバーを汗だくになって押しているイメージがあった。

「凄い状態になるものなのね。ここまで、硬くなったオ×ンチン、見たことがないわ」

「そうだろうね、自分でも痛いくらいだから……」

「そうよね、チョッと間違って、爪でも当てたら、パンパンの風船みたいに破裂してしまいそう」

女は、そう言いながら、本気で破裂させるつもりなのか、時折、風のようなタッチの中に、爪で切り裂く行為を加え、夢中になっているようだった。

“あっ!”俺は叫んだ。

しかし、もう止められない水準に達していた射精中枢は、先兵の精液を放出していた。

俺は、その先兵の放出を悟り、恥を捨てた。

ことが、ここに至った以上、我慢の意味はなかった。

呼吸を止め、腰椎の底から噴出させる感覚で、射精の快感に身を委ね、最後の一滴まで、快感を味わい切る積りで、放出と云う行為に没頭した。

女が、俺の唸るような声を、どのような気持で耳にしていたのか、訊ねるつもりはなかった。

すべてが終わったと確認したのか、女は、あらためてシャワーを使うこともなく、浴室を静かに出ていったようだった。

つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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