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あぶない女 22


第22章

「静かなバトルだったね」俺は、エアコンの効いた部屋の片隅にある、籐椅子に腰を下ろした。

「チョッと面白かったでしょう、女の鍔迫り合い」

「そう、でも、男の取り合いではなかったけどね」

「宿の主人と客の、席次争いみたいなものよね」

「流石だと関心したよ。”何年、客商売やっていると思ってんのよ、馬鹿におしでないよ”と啖呵を切った女親分のようだった」

「もう、揶揄い過ぎよ、嫌な人」女が軽く肩を打つ真似をした。

俺は、軽くいなして、逆に女の腕を取った。

女は、その勢いに任せて、倒れかかり、俺を籐椅子ごと押し倒すと、唇を重ねてきた。

どこまで進んで良いのか判らなかった。

いや、下僕である俺には、そういう意思決定の選択権はない。あくまで、選択権は、シャネル女のものだった。

権利がないということは、義務もないわけだから、経験してみると、思った以上に気楽だった。

丁度、サラリーマンが、相当に理不尽で法規範無視の労働を強いられても、一定の範囲で黙々と従う心境が理解できた。

下僕である俺は、女の状況に合わせさえすれば良い。

激しく、唇を貪るのであれば、俺も貪る。

女が、スカートを脱いだら、俺もジーンズを脱ぐ。女が苛立ちながら、ブラジャーを外すなら、俺も、シャツをかなぐり捨てれば良いだけだ。

しかし、女は、舌を挿しいれてくるようなキスをする気はないようだった。

ご主人にその気がないのに、下僕が、舌を挿しいれるのは僭越だった。

女は、押し倒していた俺の上から、あっさりと離れ、スーツの皺に手をやりながら、立ち上がると、何ごともなかったように、衣装入れになっているらしい、タンスの扉に手を掛けた。

「わたし、汗流してくるけど、ビール、お先にどうぞ」

女は、俺の返事を聞くことなく、浴衣風の上っ張りを肩に掛けると、背中を向けたまま、器用にスーツを脱ぎ去った。

シャネル女に、性的な欲求があるとは思えなかった。

あのキスにも、たいして深い意味はなく、ただの気まぐれ、そんな気がした。

迂闊に、女がその気になってると思い込み、こちらが行動したら、“なに勘違いしているの?”と強烈なパンチを見舞われるところだった。

いずれにしても、汗を流して、浴衣に着替える自由は確保されているのは確かだった。

そして、ビールを飲む自由も与えられた。特に、不平はなかった。

ただ、路上パーキングした車を数時間後には取りに行かなければならないのだから、小瓶一本くらいに控える必要はあった。

浴室の方から、声が聞こえてきた。

バスタオルでも取ってくれ、と言うのだろうと思ったが、そうではなかった。

「檜の匂いが最高よ、貴方もお入りになったら」女の声は屈託なかった。

つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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