第446章私は、かいつまんで、金子弁護士との話の内容を伝えた。
「随分、急な話じゃない。でも、たしかに、スケジュール的には、姉さんが選考作業するのはギリギリよね」
「ギリギリ。それも、すべてが順調に行っての話だから、ほぼ絶望的なのよ。私もウッカリしていたんだけど、第二回目の選考は、5月かなと思っていたから……」
「3月で法人として決算みたいな業務があるんだろうね。でも、金子さんでも良いんじゃないの?」
「ひとつは、彼は事務局に徹したいので、利害関係者にような複雑さは避けたいらしいの。
それよりも、私としては、佳代子さんの遺志を継ぐのが趣旨だから、男より、女の目で選ぶのが筋だと思っているの。
それで、一番身近な女性で、信頼がおけるとなると、当たり前だけど、有紀になっちゃうの。
それ程、大変な選考にならないように、候補者は、ある程度書類で絞る程度の作業は金子さんの方でやってくれるらしいから……」
「そう。でも、書類選考時点で、金子さんのふるいに掛かるのは、どうなの?」
「あぁ、その点は、マークシート基準のような取捨選択で、彼の主観は入らないようにするようよ」
「ふ~ん、そんなことって出来るかな?」
「東京在住とか、離婚は一回以内とか、5万円が有効に作用するかどうかとか、そう云う基準らしいけど……」
「前半の二つはマークシートだけど、最後のは主観が入りそうだけどね……」
「あぁ、その点は、理屈に適っているようなこと言ってた。
職に就いているとか、子供を学校に通わせているとか、その点は彼のことだから抜かりはないと思うの。
まあ、仮に客観性に欠けていると思えば、基準の見直しは、選考者の権限だから、変えさせることも自由だから、じっくりは聞いてなかったの、ゴメン」
「私が引き受けるって決めつけていたんでしょう?」
「そう云う点もあったかな。だって、私が、選考する可能性はゼロに近かったから……。これも、ごめんです」私は、くすぐったい気分で笑ってしまった。
「もう、しょうがないんだから」有紀も、困ったもんだと云う表情を浮かべながらも、引き受けてやるよという承諾の表情を浮かべていた。
「ありがとう、恩に着ます。だからってわけじゃないけど、副理事長の報酬も出るから、月一で、劇団の飲み会くらい出来るはずだから」
「報酬ないんじゃなかった?」
「資金の投資利回りが良いから、理事長、副理事長にも、報酬出せるって、金子さんが。幾らなの?とは聞かなかったけど、毎月だから、それなりに助かるんじゃないのかな。まさか、三万円とか言わないでしょう」
「へぇ、それは助かるよね。劇団の興業成績はまあまあだけど、個人的収入はカツカツだったから……」
「そういうものなのね。自分だけ、お手盛りも、難しいだろうからね」
「そうなの、バランスって、団体生活では重要だからね」
「知らないうちに、アンタって賢くなったよね」
「失敗が、私の知恵の先生だからさ。痛い目にも、かなり遭っていはいるけど」
こうして、有紀のシングルマザー支援基金の副理事長就任が決まった。
これで、私は、いつ死んでも、周りに迷惑を掛ける心配はなくなった。
つづく
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