第27章
……いずれにしても、圭に確認するのが一番だ。まさか、深夜の電話もメールも拙い。有紀と待ち合わせする明後日までに、状況を確認する。それしかないよね……
私はそこまで自問すると、ありがたい体質、そのまま深い眠りについていた。
『メールじゃ意味不明だから、電話して貰える』私は、圭と何度かメールのやり取りをした後、苛立つように最後通牒のようなメールを送った。
『了解!30分後に電話します』了解じゃないだろう!と思いながら、私は圭の能天気なメールを読んだ。そして、部長に、私用だと断って、ビルを飛び出し、近くの公園に急いだ。
「えっ!美絵が、姉さんとのこと知っているって?そんな馬鹿な、知るわけないよ」圭は、昨夜の有紀の話を全否定した。
「まったく心当たりがないのね」
「そう、まったくないよ。それにって言うのも変だけど、美絵は妊娠しているみたいだし…」
「えっ、もう妊娠したの?」
「うん、たぶん、2か月か3か月だと思う」
「つまり、アナタ達の関係は順調ってことよね?」
「俺も、それなりに気を使っているから、その辺の美絵の変化を見落とすことはないと思う」
「そう、でも有紀が作り話する筈もないしね」
「まあ、たしかに、それもそうだけど…」
「わかったわ。明日、有紀と会うことになっているから、さり気なく、美絵さんとの話の内容を聞いてみるわ。圭は、いつも通りに振舞っていなさいよ」
「うん、そうするつもりだよ。だって、本当に何事もないんだから。それに、こう云うこと姉さんに話すのは変だけど、美絵の身体は、相当に目覚めて来ているくらいだから…」一瞬、愉快ではない気分が襲ったが、それが筋違いなことくらい、私は理解していた。
「そう、それは良かった。私だけ好い思いするのは心苦しいから、良いことだわ」
「それもこれも、涼ねえさんの薫陶の賜物だから、感謝してるよ。美絵だって、本来なら、姉さんにお礼を言うべきなんだから」
「それはないでしょう。間違っても、そんなこと言っちゃ駄目だよ」
「わかっているよ。そこまで俺、バカじゃないよ」圭が漸く笑った。そして、私も吸い込まれるように笑い、明日、有紀との話によっては、その事情をメールで知らせるから、夜はマナーモードにしておくように伝えた。
……どういうことなのだろう?美絵さんは、女の勘のようなもので、有紀に話をしたのだろうか?そんな不用意なことをする人なのだろうか?いや、考えてみると、圭に他に女がいるんじゃないかと疑ったとき、まずは、母さんに尋ねると云う不用意さがあった。……
……次に、私に尋ねてきたのだ。美絵と云う人には、杞憂のようなものを、誰かに投げつけて、自分だけ、心の平穏を求める性癖があるのかもしれない。そう、きっと、あの時の疑惑を解決してくれた私が、実は犯人だと、疑い出したのかもしれない。……
……そして、幾分事実を歪曲して、有紀に事実のように語り、有紀を悩ませ、そしていま、私を悩ませている。……
……そうなんだ、美絵さんと云う人は、幾分精神的厄介な人なのかもしれない。後ろ向きの”変”なのだから、圭に危害は及ばないだろうけど、何を言いふらすか判らない、危険な性癖の持ち主かもしれない……
私は、当座のいい加減な解釈をくわえて、社に戻った。
つづく
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