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終着駅434


第434章

「結局、金子さんとは、どう云う話をしたの?」

有紀が、いつものようにラブチェアーに沈み込んで、ワイングラス片手に尋ねた。

「うん、話は、解体工事するにあたり、ご近所さんへの挨拶を何処までするかとか、解体費用は、次の建築費用と抱き合わせすることで、相当叩けるとか、そう云う話だったかな……」

「高坂尚子の脅威がなくなった以上、あそこに住むことに問題はなくなったわけだし、建築と抱き合わせでも良いんじゃない?」

「うん、返事はしていないけど、それで良いかなって。ただ、多分、同居するだろうアンタの意見も聞いた上でって、そう思ったの……」

「問題なしよ。でもさ、金子さんの話の前の、父さん達の新しいマンションに、私と姉さんの部屋が用意されているって話の方が気になるんだけど……」

「あぁ、部屋の話ね。色々詮索すれば、我々への無言の圧力とか、そういう受けとめ方も出来るけど、無神経を装えば良いわけでしょう。それに、母さんは、単純に、焼ける前の家と同じ状況に近づけたかった、そんな気もするんだよね」

「随分、善意な解釈に思えるけどな~……」

「以前のままの母さんなら、私の解釈は甘いと思うんだけど、この間行った時の感じは、かなり違うって思ったの……」

「どの辺が違うわけ?」

「そうね、押しつけがましい態度が消えていたかな?」

「悟りの境地に入ったとでも?」

「そんな立派なもんじゃないだろうけど、気力のようなものを感じなかったね。引っ越しとかで、疲れていたのか、老いたのかもしれないけどね」

「あの人が、疲れたくらいで性格が変るとは、思えないけどな~……」

「そうね。多分、年齢的なものか、諦めの一種じゃないか、そんな風に受けとめたんだけど……、正直な話、判んないと云うのが正確かな……」

「そうね、一晩くらいなら、猫を被ることくらい出来るだろうしね。何度か見てから、判断した方がよさそうだけど、私も、ひさびさ顔でも出してみようかな……」

「何だったら、赤ん坊が保育器から解放された次の日辺りに、有紀も時間があったら、一緒に行ってみる?」

「えっ、実家に連れていくの?」

「そう、ベビーベッドまで用意してあるの見たからね、その辺は忖度しても良いんじゃないかって……」

「まあ、たしかに、一晩くらいで人が変るって事もないだろうし、赤ちゃんがいれば、こちらへの意識が薄れるかもね?」

「そう、ドサクサ紛れに、義理を果たすのも悪くはないよ」

「なるほど……」有紀は、それでも考え込んでいたが、時間の都合さえつけばと云う条件で、実家への一泊を了承した。
つづく

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鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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